タワーマンション懐疑論の夜明け

小池新都知事が誕生して、さらにTBSドラマ「砂の塔」が始まり、
拙著「マンション格差」も刊行され(あんまり関係ないか)、
ここのところ「豊洲のタワーマンション」に対しては、
斜め横からの冷たい視線が随分浴びせられましたね。

私も便乗して、あれやこれやを書いたり、喋ったりしました。
まあ、お座敷がかかればどこへでも出かけて行って、
自分の芸を披露するのが仕事でございますので(笑)。
豊洲や有明のタワマン住民諸氏にとってはおもしろからぬ
ことではございましょうが、まあご勘弁を。
私のようなチンピラがほざくことによって、みなさまの
不利益は実質的に1ミリも増えないことは請け合います。
ただの雑音でございます。

さて、折も折、こんな本を読みました。
桐野夏生さんの「ハピネス」です。
最初の50ページで挫折しかかりました。
なんか、あまりにも重たいお話しで逃げたくなったのです。
ところが150ページを超えたら、一気呵成。

何を隠そう、豊洲のタワーマンションのお話しです。
「階数ヒエラルキー」や「ママ友」のドロドロ話が出てきます。
登場人物は、ほとんどがママ友たち。
「ボスママ」も登場します。「砂の塔」ほどではないにしろ。

主人公が追い込まれていく構図も「砂の塔」と似ています。
最初は「暗い話はヤダなー」と思いながら読み始めました。
途中からは、物語の展開に引き込まれました。
最後には、キチンと救いが入っていますので、ご安心を。

しかし、この著者・桐野夏生氏はタワーマンションに否定的ですね。
そこに憧れる主人公を冷ややかに描いています。
有名幼稚園や市立小学校にわが子を入れることに血道を上げる
ママ友たちの価値観に対しても、距離を置いた描き方ですね。

タワーマンションに関しては、私もかなり冷やかです。
ただ、それは今のところ個人の感覚や価値観の問題だと思っています。
好きな人もいれば、嫌いな人もいます。私は後者に近いですね。
好きな人が勝手に住む分には、現状ではさしたる問題はございません。

私は、マンションのご購入や売却についてのご相談を受けています。
実のところ、タワーマンションに関するご相談もかなりあります。
さすがに、私のブログの読者さんですから、豊洲や有明の
タワーマンションに関するご相談は少ないのですが(笑)。

私の肩書は色々ありますが、いちばんよく使われるのは
「住宅ジャーナリスト」です。特に異存はありません。
あるデスクは「榊マンション市場研究所主宰」の方がいいと。
まあ、気にしません。何と呼ばれようと、自分は自分ですから。

住宅業界に関わる仕事をしていて常々思う日本人の住まいに対する
感覚の特異なところが2つあります。
・新築住宅に住みたがる
・タワーマンションに住みたがる

まあ、なんとなく気持ちは分ります。
しかし、そこに合理的な理由はありません。好き嫌いでしょうね。

私のように世間にモノ申すことを仕事にしている立場だと、
大勢に迎合していては埋没してしまいます。
みんなが「ふーん」と思っていることに対して
「それは間違っている」と大上段に断言して、
説得力ある説明をしなきゃいけないのです。

ちと話は飛びますが、昨夜はさる著名なエコノミスト氏と飲んでいて
TVコメンテーターの木村太郎さんの話になりました。
「トランプが勝つ、と言っていたので今や引っ張りだこですね」
と私が申し上げたら、そのエコノミスト氏いわく
「彼はね、『みんながヒラリーだ』と言っているのだから、『いや、トランプだ』といえば注目されるだろ、という発想だったのだよ」と。

まあ、その通りですね。
私は別に多くの人が「タワーがいい」と言っているから、
天邪鬼で「タワーなんて・・・」と主張するわけではありませんが(笑)。
しかし、普通の人が言わないことを言う意味と言うのはあります。

私は、タワーマンションに関してはかなりの確率で「健康被害」が
あると思っています。ただ、それは証明されていません。
20年以上前に、逢坂文夫氏という研究者が高層階に住むと
妊産婦の流産が多くなるという研究結果を発表しました。
すると、なぜか当時の厚生省からの研究費を打ち切られました。
それ以来、学術的な研究がなされていません。

私は今、ある出版社と組んでタワーマンションが人間の健康に
どういう好ましくない影響をもたらしているのかを調査したいと考えています。
まあ、実現するかどうかは今のところ分りませんが。
拙著「新築マンションは買ってはいけない」では、
ヨーロッパの多くの国で高層住宅が禁止されている現状を取り上げました。

桐野夏生さんの「ハピネス」では、そういった肉体的なことよりも
タワーマンションに住む人々の心理的な歪みを描き出しています。
読んでいると「さもありなん」と思ってしまいます。
実際、それと似たようなお話もいっぱい聞きました。

タワーマンションに関する否定的な価値観や、
健康被害への科学的な検証が行われるのは、今後の話ですね。
でも、ようやくこの国でも、ああいう醜悪な集合住宅についての
まともな議論ができるようになったという感じです。

そんな中でも買いたいマンションは

島津山の眺望住宅

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2016/11/23 14:12 Comments (3)

3 Comments

助成金の打ち切りは、よく聞く話です。
階層社会と子どもの学力格差、それにより格差が再生産されてしまうという研究を長年続けてらっしゃる苅谷剛彦先生も助成金の打ち切りで、イギリス留学ということになったと。
目障りな研究はするんじゃないってことでしょうが、隠そうとしても顕在化しちゃうものです。

2016/11/24 12:28 | by かなざわ

井上様

お久しぶりです。
まだ大丈夫ですよ。
北京も上海もまたバブっていますね。
しかし、共産党政権はバブルの何たるかに
気づいていないみたいで怖いです。
豊洲なんか、中国のバブル崩壊の嵐に比べれば
さざ波みたいなものです。
向うは、バブルの清算で国まで滅びますよ。
日本もえらい迷惑しそうな気がします。
まあ、好みはひとそれぞれ。
ただ、売るのなら早いうちですね。

ごきげんよう 榊淳司

2016/11/24 09:33 | by Sakaki Atsushi

榊さん、どうも・・・外は雪です。

ハピネス読んだのは、いつだったか・・2年前くらいかな・・
「砂の塔」は録画したやつを毎回見てます。
誇張され過ぎですが、まあ、そういうことは大いにあり得ると思っています。
「砂の塔」のベースはそのハピネスと
週刊朝日の2008年2月の「お宅は何階の部屋?」と言う記事だと思っています。
いやぁ、こういったことはタワマンに限らず、
閉鎖された日本人社会には、どこでも起こることと見ています。
上海や北京の日本人村でも、そういうことはあるようです。
私は、そういうの大っ嫌い、だから、そういうところには住んでませんでした。
島国根性と村社会根性がそうさせてるんでしょうね。

さて、私が最初に北京で買ったマンションは陽光広場と言います。
20年前ですが、将来近くに五輪会場が出来るということと、
その圧倒的な存在感に惚れたので買ったのです。
陽光広場はGoogleで検索して見てください。
私のブログがトップに出てきます。

その陽光広場を売って、衝動的に買ったのがSKYZ。
SKYZも将来五輪会場が近くにでき、圧倒的な存在感がある。
そこに向かったのも運命だったのかも・・。
今でも、気に入ってますね、あの開放感と水辺の風景。
「東京湾岸風景」と言う人気のサイトがありますが、
最新記事がBAYZとSKYZの夜景です。
未だに愛してる人は結構多いんでしょうね。

私のSKYZの部屋は1年チョイで20%アップ。
今月の成約物件は坪単価346万です。30%アップくらいか・・
まだ風評被害の影響は受けてないのかも・・
でも、来年はワカラナイ。下がることは大いにあり得る。
しかし、私のように愛してる人も少なくないはず。
さあ、どうなるか・・楽しむしかないっすね。

2016/11/24 08:29 | by 井上@打浦橋@上海

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