傲慢な都市計画は失敗する

街というのは生き物です。
元気な街は常に新陳代謝しています。
建物も、お店も、人も入れ替わっています。
自然に人が集まってきます。

もう10年くらい前でしょうか。
とある不動産屋さんの納会に参加しました。
あの舛添前都知事が家族で「会議」をなさった木更津のホテル。
そこに不動産屋さんとその関連業者など、
オッサンが約200人と、ほんの数人の女性が集まって、
大宴会を繰り広げるわけです。
もちろん、コンパニオンのオネエちゃんたちもいっぱい。

当然の如くオッサンたちはコンパニオンさんたちの
サービスメニューにないピ・クサロン的な振る舞いを繰り返すので、
宴席のあっちこっちから黄色い悲鳴が絶え間なく聞こえてきます。
まあ、そんなことはどーでもええのですが。

夜寝るために私があてがわれたのは4人部屋。
幹事さんが気を遣ってくれたのか、同室者には不動産屋はゼロ。
建築家に工務店に建材屋さんだったでしょうか。
私は当然の如く建築家氏とぺちゃぺちゃお話します。

その彼が言っていたことで今でも覚えているのは、
「日本では都市計画が成功した試しがなし」ということ。
まあ、私がかねがね考え、ここで主張していることと同じ。
当然、大いに盛り上がりますわな。
まあ、それもいいとして。

その昔、都は平城京から平安京へと移されました。794年でしたか。
その時はきちんと都市計画がなされたはず。
今の京都の旧市内は、いちおうその時の計画が基本でしょうね。
いわゆる碁盤の目ですね。

道幅はかなり狭かったのではないかと思います。
源氏物語を読んでいると、やんごとなきお方たちは牛車で
移動しているようですが、ガチャンコしてしまった場合は
どちらが道を譲るかでいさかいになる場面が出ていますね。

かつてNHKドラマにもなった「一路」では、
大名行列同士が行き合うとどちらが譲るべきなのか、
というややこしい判断が迫られるシーンがありました。
まあ、私はテレビではなく原作で読んだのですが。

世田谷というところは、昭和の初めころまでは畑と田んぼでした。
ちょっと奥に入ると道がものすごく狭かったりします。
あれは多分、あぜ道がベースになっているのでしょう。
車で現地調査をしていると、時々嫌になります。

建築基準法では、道路幅は基本が4メートル以上になっています。
「うそ、それよりも細い道路なんていくらでもあるやん」
そうです。いくらでもあります。特に世田谷には。
これは建築基準法42条2項に定められた道路なので、
建築・不動産業界では「2項道路」と呼んでいます。

2項道路に面する建物は、建替え時にセットバックする義務があります。
でも、なぜか塀を残して改築する建物が多いのです。
そうするとセットバックの必要なし。けっこうややこしい話です。
まあ、この話も置いておいて。

道路の設定というのは街づくりの基本です。
理想的なのは、やはり平安京や平城京の「碁盤の目」でしょう。
東京も銀座の周辺はそうなっています。
ニューヨークもそうだそうですね。
それが一番分かりやすいわけです。

ところが、都市計画で作った街で素直に碁盤の目に
なっているところはかなりの少数派。
多摩ニュータウンなんてむちゃくちゃでしょ。
もちろん、港北NTも千葉NTもむちゃくちゃ。
というか私から見るとデタラメにしか見えません。

ああいう街が今ひとつ多くの人に好かれないのは、
道が分かりにくい、ということがありそうです。
その他にも、目的地までやたらと歩かせますね。
それも無機質で面白みのない風景の中を。
素直に碁盤の目にしておけばよかったのに、
都市計画を考えた誰かが「それでは平凡すぎる」と
考えたのではないですか。そうだとすればアホ臭いお話です。

江東区の埋立地である有明エリアには有名なビックサイトがあります。
あるいは有明コロシアムがあります。
年がら年中、イベントがたくさん開催されます。
しかし、行く度に腹を立てて帰ってくる人が多いですね。
現に私の回りの人々は異口同音に「遠すぎる」と言います。

そもそも「りんかい線」とか「ゆりかもめ」といった
マイナー路線に乗らされる上に、駅からも離れすぎ。
車で行くと、駐車場から遠すぎ。意味がありません。
あれはどう考えても都市計画の大失敗例ではないですか。
まあ、シティタワーズ東京ベイが良い方向に流れを
変えてくれることを祈りましょう。
私としてはそこの大きく期待はしていませんが。

ただ、あの辺りには五輪の会場がいっぱい出来ますね。
人の流れをどうするのでしょうね。
世界からやってきた人に不便で不快な思いをさせないでしょうか。
まあ、埋立地ですから街並みが無機質なのは仕方ないとして。

都市計画というのは、少数の人間の頭の中から生まれます。
人間は神にほど遠い存在。私はそう思っています。
つまり、人間はまだまだ完成度の高い街を人工的に創れるほど
賢くはなっていないのです。
だからこそ、都市計画を行う人は己の能力に謙虚であるべきです。
ああいう無機質な街に立つと、いつも人間としての虚しさと
傲慢な都市計画者への怒りを感じずにはいられません。


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9月30日土曜日の13時から17時まで、
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2017/8/29 0:07 Comments (6)

6 Comments

トスカ兄さん、こんにちは。

港区で山手線内で最寄り駅徒歩10分と言えば、
私の2番目の母校ですか(笑)?
まあ、それはいいとして。

埋立地に行ったことがないとは何とも幸運。
私はマンションの現地を訪ねるのが仕事の内なので、
しょっちゅう行きますよ。
ああいう場所に住んで何ともない方というのは、
心象風景が私とは全く違うのかな、といつも思います。
でも、大勢いらっしゃるのですよ。
豊洲はまだいいですよ。月島も佃も勝どきも。
お台場とか有明はひどいですね。
荒漠とした感じが寒々しい限り。
その昔、オダギリジョーという俳優が
朝起きて「ここ、どこ?」と、やっていました。
あの感覚は、まさにその通り。
まあ、機会があったら一度行ってみてください。

ではまた ごきげんよう 榊淳司

2017/08/30 13:13 | by Sakaki Atsushi

まろたんさん、こんにちは。

今日の東京は猛烈に暑い。
お昼に3缶目をプシュッといこうか迷いました(笑)。

日本も基本的には父系社会ですね。
天皇家からして男系ですから。
でも、実態は母の方が強いです。
日本も、我が家も(笑)。

人間が少ないのはいいですね。
私は人間が多いのが大の苦手。
満員電車に行列に待合室。
まあ、本が読めるのが救いですが。

「昭和」、いいじゃないですか。
近頃は昭和が遠くなりました。

それではまた ごきげんよう 榊淳司

2017/08/30 13:06 | by Sakaki Atsushi

榊さん、こんにちは。

>世田谷というところは、昭和の初めころまでは畑と田んぼでした。

大学時代に所属していたゼミの先生に大学の卒業アルバムを見せて頂いたことがあります。キャンパス周辺があまりにのどかだったので、びっくりしました。地方大学ではありません。本部は東京都港区の山手線内側にあり、最寄り駅から徒歩10分足らずです。先生が卒業されたのは1955年で、その頃は港区でさえ都会とは言えない所だったのですね。隔世の感があります。

>ああいう無機質な街に立つと、いつも人間としての虚しさと
>傲慢な都市計画者への怒りを感じずにはいられません。

私は東京湾岸の埋立地に行ったことはないのですが、画像を見るといかにも殺風景という印象を受けます。私のように田園地帯で生まれ育った者は、息苦しくなってしまいそうです。大地震が起こったら、地盤が液状化したり津波に襲われたりする不安もありますから、私としては、率直に言うと、埋立地には住みたくないなと思ってしまいます。

ごきげんよろしゅう。

2017/08/30 01:02 | by アル中のトスカ兄さん

榊さま。

どなたの言葉でしたか。
「哺乳類であるニンゲンは、放っておけば母系社会になる」と。
で。
西洋人は、敢えて「父系社会」を作った、と。
この点に於いて、アホンジンより、彼らはクレバー?
ま、どうでもエーンですよ。このトシになりますとね。(笑)

ただ、ただ、と。
ああ・・・。
やめておきましょう。

地方は、いまだに「昭和」ですよ。(笑)
その是非はトモカクとしましてね。
でも、
ニンゲンが少ないのは、ホッとしますわ。(笑)

ごきげんよう。

2017/08/29 20:21 | by まろたん

まろたんさん、こんにちは。

そんなこと言いましたか。
まあ、私が言いそうなことですね。
ただ、記憶にございません。
大変失礼しました。

日本人、不思議です。
なぜにタワーマンションなどという醜悪な造形物に住みたがるのか?
あれを醜悪と捉える感覚が見事なほど欠如しています。
ヨーロッパ人は普通に持っているのに。
そして、なぜ私が欧州人と同じ感覚なのかも不思議。
別に自慢したいわけではありません。
欧州人が日本人より優れているとは思いませんから。
ただただ、不思議。

アジア的混とんは私も大好きですよ。
独善的な都市計画よりもはるかに親しみを感じます。

まあ、世の中不思議なことだらけ。
解けない謎を抱えてあの世へ行くのでしょう。

それではまた ごきげんよう 榊淳司

2017/08/29 11:24 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

「都市計画」とのお題。
ずっと前に、このブログに書き込みました。

あのバブルの時代、或る専門の大学教授が、
「東京には土地がないのではない。土地政策がないのです」
という主旨の論文を書いていたことを。

それに対しての榊さまのコメ。
「ニッポンはアジアなのですから」と。
御意。
御記憶にありますでしょうか?

私も思います。
日本はアジアなのです。
「混沌・猥雑、今ふうにいえばアナログ」
「明日はあしたの風がふく」と。(笑)

深く本質を考えることが、苦手のようです。
そのくせ、ラテン系でもなし。(笑)
ま、ラテン系は深く掘った故の、生き方かも。
分かりませんが。

ま、ここまで来たら、どうでしょうね。
「あとは野となれ・・・・」と。(笑)

ごきげんよう。

2017/08/29 07:26 | by まろたん

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