マンションデベをぶん殴った男

ハッピーリタイアメント・・・・
お金のために働くことが嫌いな私としては
生活の心配がなければ、今すぐでもOKです。

昨日、私の事務所にお見えになった方は61歳。
リタイアして2年目。
仏像彫りや和竿づくり、詩吟、釣りなどに
「いやあ、毎日忙しいぞ、ワシは」という
羨ましい限りの「ハッピー状態」。

「忙しい」ながらも、昨日はお茶を飲みながら5時間、
いろいろなお話を聞かせてくれました。
それはそれは、面白かった!
私は本を読む以上に、人の話を聞くのが好きです。
ただし、話す中身のある人に限りますが。

そのリタイア氏・・・眼光は鋭く、
面相は般若の如く「おっかない」感じ。
見た目だけなら、警視庁の四課が担当する業界の方々・・・
といっても100人が100人信じると思います(笑)。

そんな彼は、私が若い頃に2年半ほど勤めていた広告代理店のOB。
でも、初めてお会いした頃、私はすでに辞めていました。
ある時、車でご自宅にお送りすることになって、
運転しながらお聞きした話の印象がかなり強烈。

「榊君、ワシはいろいろ社内で噂をされとると思うが、別に気にする必要はないぞ」
「はい・・・私はもう社外の人間ですから噂なんて聞こえてきませんけど・・・ちなみに、どんな噂ですか?」
なーんて、でしゃばって聞いてしまったのです。
「そうか・・・うーん、ワシはクライアント(顧客)を殴ったことになっておるが、あれはウソじゃ」
「へえー、そんな噂があるのですか。全然知りませんでした(本当です)」
「ウン、あの会社はすぐにくだらん噂が広まる」
「そうですね。私もあらぬ噂をいっぱい流されていますよ(笑)」
そういえば私も、外注業者の癖に部長の机に足を投げ出して電話をしていた、
なんて根も葉もない噂を流されたことがありました。
「そうじゃろうな。本当に困ったことだ。ワシはなあ、噂されているようにS社のヤツを殴ったのではないぞ。殴ってやろうかとも思ったがな・・・ワシが殴ったのはS社ではなくI社のヤツじゃ! みんな、そこを間違ごうておる!」

ウッヒョー・・・やっぱり殴ってるじゃん!

そういう武勇伝がヤマのようにあるお方。
大学時代はバリバリの体育会。それも武道系の主将です。
私は親しくさせてもらっていますが、もしそうでなければ
ネオンの下では絶対にすれ違いたくないタイプ。

彼はその広告代理店を「部長」で終えました。
入社したときは「社長になる」つもりだったそうです。
マンションデベロッパーばかり相手にする営業職ですから
それはもう理不尽に継ぐ理不尽の連続。
それでも懸命に努力して、艱難辛苦を乗り越え、
異例のスピードで昇進していったそうです。
ところが・・・・
この前も書いたとおり、所詮は「てなもんや代理店」。
経営は、創業オーナー社長の超ワンマン。
いってみれば、オスマン・トルコ帝国と同じ状態。
「スルタン(社長)以外はすべて奴隷(イエスマン)」。
肩書きだけあがって「局長になっても、専務になっても」
社長にモノをいえる人は誰もいない・・・
そのワンマン社長が、どうしようもないバカ息子に継がせようとして・・・・
元来、「応募者の中からバカを選んで採用し、
その中からさらにバカを選りすぐって昇進させている」
といわれても仕方がないような
人事を行っていましたから、上部構造が脆弱極まりなし。

「こんな会社で出世しても仕方がない」
リタイア氏がそう決意したのは50歳の時。
相当の勇気を要したようです。
でも、彼は面相どおりの「強い」意志を持っています。
「ワシの『気』は、会社のためにも客のためにもつかわん。自分のために使う」
それ以来、社長の理不尽な要求にはすべて正論で反論。
激怒した社長に、たちまち窓際に追いやられました。

2年後、クライアントに「ヒラ」の身分で出向。
でも、給料は部長のときのままだったそうです。
社長としては、反抗した社員に対する「懲罰人事」のつもり。
でも、本人にとっては渡りに舟の災害「避難」。
「そんなもん、ホイホイと行ったがな」
行った先では平社員の扱いだけど、
仕事は「一人前」だけやっていればOK。
「それはラクやで。金も使わんでええし」
と、本人にとっては一石三鳥のありがたい人事。

そして会社は案の定、下り坂をゴロゴロと転がり始めます。
ワンマン社長はバカ息子とともに追放され、
IT系の新興企業にM&A。
「これはもうイカンな」と考えていた矢先に
最後かと思われる優遇付き早期退職募集。
それに応じて、加算された退職金をもらった上、
出向先で2年間の嘱託雇用を確保。
その2年も終えて、昨年春にめでたくハッピーリタイア。

まあ、沈み行く船から自分の分だけはキッチリもって
脱出したようなもの。
「ワシは社長にはならんかったけどな」
というのが、唯一の人生の取りこぼし。

そんなリタイア氏の子どもの頃から学生時代、
現役時代の四方山話をたっぷりとお聞かせいただいて、
楽しい楽しいひと時でした。
若い頃から人生を真剣勝負で生きた人には、ふさわしい
「ハッピーリタイアメント」が待っていたのです。

さて、私は彼のようにハッピーリタイアできるか?
ちょっと無理でしょうね。
私は彼のように「真剣勝負」では生きていません。
仕事よりも家族、自分。
お金を稼ぐ「仕事」ために
『気』などほとんど使ってきませんでした。
何とっても、ネが「てなもんや」ですから。


2010/12/9 16:15 Comments (0)

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