晴海タワーズは「買ってはいけない」? & 不毛のコンセプト

何だか悪い予感が当たりそうな気配になってきました。
他でもない、湾岸のタワーマンションマーケットです。
例の「ザ・パークハウス晴海タワーズ」という883戸の物件。
販売予定がズレズレになって今は「3月上旬」。
それはまあいいとして、どうやら私の予想よりもだいぶ高そうな様子です。

私は「プラウドタワー東雲」が坪単価240万円で、
「第1期250戸」程度を捌くのがアップアップだったので、
こちらはせいぜい250万円くらいで出てくるのかと考えていました。
本当は、その250万円でも割高で、1800戸を売り切るには
ズバリ180万円くらいが妥当だと思います。
それが、どうやら200万円台の後半から300に手が届きそうな気配。
確かに、豊洲のしょーもない住友のタワーが坪300万円ですから、
それと比べたらこちらが300万超であってもいいはず、
という議論をすることは可能かもしれません。
でも、豊洲のシティタワーズはそもそもマーケットアウトした「圏外」物件。
それを基準に「勝どき徒歩11分(橋越え)」を、
同レベルに値付けするのはかなり乱暴だと思います。

まあ、私のようなチンピラがこんなことをほざいても致し方ないことです。
ただ、もしこのまま300に近いラインで販売が始まれば、
私としてはこの「ザ・パークハウス晴海タワーズ」を
即座に「買ってはいけない」カテゴリーに入れるほかありません。

参考レポート

東京のタワーマンション全解説49物件
価格 9,980

買ってはいけないタワーマンション
東京都心編25物件

価格 6,980

上の「全解説49物件」では、東京23区で販売されている
タワーマンションを
「買ってはいけない」
「買っていい」
「ニュートラル」
「まだ判断できない」
の4つのカテゴリーに分けています。
このうち「買ってはいけない」カテゴリーの25物件だけを
独立掲載したものが下の「東京都心編25物件」です。

現在のところ「ザ・パークハウス晴海タワーズ」は
まだ価格が発表されていないので「まだ判断できない」に入っています。
これが「買ってはいけない」に「格付け変更」するワケです。
まあ、私風情がこの巨大なマンションを「格下げ」したところで
大きな影響はないはずです。
レポートの売行きから考えると、私の「格下げ」によって
購入の判断を変える方は100組未満だと思います。
広告費に換算するとマックスで1億円くらいですか。
石川遼君のギャラにも及ばないでしょう。

さて、今日の本題はマンションの「コンセプト」について。
「ええ、コンセプトって何?」
と思われる方も多いことでしょう。
辞書的な意味は「概念」だそうです。
よく分からないでしょ?
私の理解するところでもう少し柔らかく翻訳すると
「そのモノを作るための基本的な考え方」みたいな感じ。
短く言うと「制作意図」とでも申しましょうか。

したがって、マンションを作るにあたっても
当然「コンセプト」なるものはあってしかるべしです。
マンションのオフィシャルサイトを覗くと、
「コンセプト」という題目のページが設定されていますね。
そこを見れば「そのマンションを作るための基本的な考え方」や
「制作意図」が分かるのでしょうか?
「はあ・・・」という気の抜けた返事が聞こえてきそうです。

ハッキリ言って、ほとんどのマンションのHPでは
「コンセプト」項目を見た所で本当の「コンセプト」は分かりません。
それどころか、「なんかよく分からない」ものばかりです。
ひとつ例を挙げてみましょう。
冒頭で取り上げた「ザ・パークハウス晴海タワーズ」
オフィシャルページをご覧になってください。
そこにも「コンセプト」なる」項目が設定されています。
開けてみると・・・・

住まいのコンセプト「the TOKYO of TOKYO」
東京中が羨む、東京になる。晴海

みなさん、これでこのマンションの
「基本的な考え方」や「制作意図」がお分かりになりましたか?
日本語を操ることで糧を得ている私にも、サッパリ分かりません。
これだけでは「東京」を連呼しているにすぎません。
まるで選挙カーのウグイス嬢みたいじゃないですか。

この後に続く文章を読むと、多少なりとも言いたいことは分かります。

東京だからこそ手にできる憧れと、東京でありながら享受できる安らぎ。
そんな”新しい東京の魅力”とともにある暮らしを叶える住まいが、
the TOKYO of TOKYO

うーん・・・それって東京に住むんだよ、
と言っているだけのようにしか理解できません。
どういう考えでこのマンションを作ったのかが何もありませんね。
最後の方にこういうのもありました。

目指したのは、都心生活を求める人にとって理想の住まいであること。

ここが唯一、モノづくりの「基本的な考え方」や
「制作意図」と読み取れそうなところ。
でも、かなり平凡ですね。
「都心」の物件ならどこにでもあてはまりそうなことです。

上げ足を取るような指摘ばかりをさせていただいて大変恐縮です。
実は、私も20数年こんなコピーばかりを書いてきました。
だからこそ、その空虚さを人一倍実感しているワケです。
私が申し上げたいのは、売主側が「コンセプト」だと称して
みなさんに伝えていることは、
ちっとも本当の「コンセプト」ではない、ということです。

では、連中が「コンセプト」だと称していることは、
いったい何なのでしょう?
それはつまり、売主が「この物件の一番のウリ」だと考えていることです。
この「ザ・パークハウス晴海タワーズ」であれば
「この物件は東京の中の東京にできるんだぜ」ということなのでしょうか。
でも、かなり苦しいですね。
本当は、築地の端っこから勝鬨橋と黎明橋を渡ってやっとたどり着く
東京湾に浮かぶ「埋め立て島」でしかありません。
でもまあ、そんなことはこの際いいとしましょう。
この「晴海タワーズ」の場合は、売主が何を考えているのかが
「コンセプト」からまだしも伝わります。

もう一つ例を挙げましょう。
物件名は「プラウドシティ稲毛海岸」
ここのオフィシャルHPには「プラウドシティ構想」という項目があります。
これがいわゆる「コンセプト」だと考えていいはずです。
そこに出ていることは・・・・

RAINBOW village構想
『今までにないプラウドの街』をつくるために。
壮大な街づくりをすべく選ばれた、稲毛海岸の地。

うわー・・・ワケわからん、という世界ですね。
そもそも「RAINBOW villageってなんのこっちゃ?」となります。
これだけではほとんどどんな街か想像することができません。

こういった「ワケわからん」系のコンセプトが躍っているのは
売主が「この物件はコレだ!」というウリを見つけられなかった、
というケースが多いものです。
つまり、物件自体の力がかなり脆弱であることの裏返し。
この「プラウドシティ稲毛海岸」にしたところで、
「稲毛海岸」駅から徒歩17分と、
これからのマンションとしては「あり得ない立地」。
さらに駅周辺では激しい液状化が見られました。
モノは長谷工コーポレーションの施工。もちろん直床。

壮大な街づくりをすべく選ばれた、稲毛海岸の地・・・
なんて言っていますが、実際は千葉県企業庁からの払い下げ。
「選ばれた」なんて表現は、ちょっと違うと思いますがw。

この物件のコンセプトページらしきところから読み取れる教訓は
「ワケの分からんコンセプトには気を付けろ」ということでしょうか。
そこには物件の脆弱な側面を覆い隠す意図がある場合が多いのです。

さて、いつもの「そもそも論」をさせていただきましょう。
そもそも「コンセプト」なるものは、
すべてのマンションの広告に必要なのでしょうか?
マンションを作る側の考え方が取り分けユニークであったり、
他とは際立って違う場合は「コンセプト」を明解に表現すべきでしょう。
しかし、長谷工が作るような工業生産的な大規模マンションや、
どこに建っていても大して違いのないタワー物件が、
わざわざエンドユーザーを惑わすようなワケの分からん
「コンセプト」を前面に訴える必要は何もない、と私は思います。
エンドサイドでも、あんなものいちいち見ていないのではないでしょうか?
チラと眺めても、購入の判断材料にしているのかどうか・・・

それが証拠に、新築マンションのモデルルームを訪れる方のアンケートでは、
物件のオリジナルHPとヤフー不動産、スーモなど、
経由するサイトはかなりばらけているそうです。
そして、ヤフー不動産やスーモなどのいわゆる
「不動産ポータルサイト」の各物件表示には
「コンセプト」に類する項目がありません。
つまり「立地」「環境」「間取り」「設備」などの実質的な項目だけ。
彼らはそれを見て、モデルルーム訪問を決めるのです。
いってみれば、大半のエンドさんは
「コンセプト」なんて重視していない、ということですね。

ところが、そういった現実をマンションデベは分かっていません。
分かっていても、直視しようとはしていないようです。

私は、マンションの広告と言うものは
「物件の内容を分かりやすく伝える」ことが第一だと思っています。
つまり、まずは良質な告知広告であることが前提。
その上で、オリジナルの魅力を伝えるべきですね。
したがって、妙にイメージばかりを訴求するとか、
タレントが出てくるのはエンドユーザーに対する欺瞞行為です。
コンセプトについても、伝えるべき「制作意図」が何もないのに
それを「創造」して広告に出すのは、一種の欺瞞行為です。
実は、私も20数年その欺瞞行為に加担してきました。
反省します。

ちょっと大きなマンションを売り出す場合、
デベロッパーは担当する広告代理店を選ぶのにコンペをします。
そのコンペで重視されるのが「コンセプト」。
デベロッパーの担当者や責任者に「これがこの物件のウリだ」と
納得させる「コンセプト」を提案した代理店が選ばれるのです。

これって、傍で見ているとかなりアホみたいです。
だって、そこには消費者側の視点がほとんど入っていません。
売主や販売側が「コレならエンドにアピールできる」と考える
「コンセプト」と、実際にエンドの心を動かす広告の間には
往々にして大きなズレが生じます。

さっき例に出した「プラウドシティ稲毛海岸」の
“RAINBOW village構想“などは、その典型ではないでしょうか。
こんなワケの分からない言葉を作り出すのに
大の大人が何人も関わり、ウンウンと唸りながら考え、
ああでもない、こうでもないと議論(ダベり?)を繰り返すのです。
ホントにバカバカしいと思います。
でも、この物件はかなり勢いよく売れているそうです。
そうすると「あのコンセプトが良かった」などと
致命的な“誤解”があちらこちらで生じることになります。
実際は、「価格の魅力」が大きかったと私は理解しています。

というか、「広告の力は商品の魅力を超えることができない」、
という平凡な真実になぜ気づかないのか不思議でなりません
いいものを安く作っていれば、広告に頼らずとも売れます。
ロクでもないモノを作って高く売ろうとするから、
「コンセプトが大切だ」「もっとインパクトのある表現を」
と騒がなければいけなくなるのです。

この消費者側にとってほぼ関係ない「コンセプト」づくりに、
今日もどこかで喧々諤々の議論が行われ、
誰かが徹夜で作業をしたり、頭を悩ましいることでしょう。
何とも不毛なことです。哀しくなりますね、ほんとに。


2012/1/12 21:48 Comments (0)

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