インフレの到来と日本の不動産価格

本日は、一時的にせよ日経平均が1万円を回復。
やはり、海外からの投機資金が日本株を買っているという観測。
金融系もさりながら、不動産セクターがかなり上昇しています。
しかし、これは決して業績を反映したものではありません。
不動産大手各社の今3月期決算については、
多くが下振れするのではないかと私は予想しています。
一部のカタカナ系デベロッパーについては、
いつ経営危機が表面化してもおかしくないと思えるほどです。

先日も書いた通り、株価の動向は5000万円以上の
高額マンションの売れ行きにかなり影響を及ぼします。
逆に4000万円未満の一般ピープル向け物件の販売動向には
直接の影響はほとんど見られません。
もちろん、半年一年という中長期スパンでは大いに関係ありますが。

4000万円未満の物件が調子よく売れるために最も必要なのは、
やはり景気回復ではないでしょうか?
景気回復→明るい未来への展望→個人所得の増加・・・
ときて、初めて高額の「住宅ローン」を借りる気になるのです。
したがって、日経平均が1万円を固めたからといって、
都心の高額物件は多少動き出すかもしれないけれど
郊外の長谷工型ファミリーには直接影響なさそうです。

でもまあ、株価が上がることはよいことです。
日本の富が増えることには違いありませんから。
願わくは、このまま株価が上がり続けるとともに、
ドンドン円安になって欲しいもの。
そうすれば、国内の物価も上がり始めてインフレがやってきます。
インフレは一時的にでも名目的なGDPを押し上げます。
輸出企業の業績も回復させるでしょう。
税収が増えて財政も破綻の危機からやや持ち直すはずです。
さりながら、金利をあげると一番困るのは政府ですから
少しは上昇するにしろ、さほど高くは出来ないはず。

円安の進行は電気料金やガス料金、ガソリン、食品等の
値上がりにつながり、国民生活を圧迫します。
つまり、日本は相対的に貧しくなるのです。
ただし、今のような閉塞感から抜け出せるような気がします。

「物価が上がったのだから、給料も上げろよ」
そういった要求も出しやすくなるでしょう。
経営サイドも、名目の利益額が上がれば給与を引き上げざるを得ません。
ただし、物価と所得は同時進行では上昇しません。
必ず、所得の上昇が遅行します。だから、当面家計は苦しくなります

しかし、多くの方々にとって何よりもありがたいのは
住宅ローンの返済負担が軽減されることです。
所得が上がったにも関わらず、金利の上昇が一定幅であれば
家計に占める返済の負担率が下がるからです。
フラット35などになさっている方には、なおさら有利です。

日本という国は、ここ30年以上の間ずっとデフレ基調です。
私が学生の頃、350mlの缶ビールは240円だったと記憶しています。
トヨタのカローラを標準仕様で買えば140万円くらい。
14型のブラウン管カラーテレビは3万円。CDラジカセ2万円。
就職した頃の初任給は、15万円くらいでした。
荻窪あたりで16㎡のワンルームマンションを借りると8万円ほど。
中身は違うにしろ、物価はかなり下がった印象です。
給料は、ほんの少しだけ上がっていますね。

45歳以下の方は日本がインフレだった記憶がないかもしれません。
「資産インフレ」だった20年ちょい前の
バブル景気は覚えているかもしれませんが。
しかし、そのインフレがまもなくやってくる・・かもしれないのです。

実は7,8年前にも一瞬、その気配がありました。
物価が上がりかけたかな、と思えたのです。
しかし、リーマンショックその他でぶっ飛んでしまいました。
何よりも、日銀にぜんぜんその気がなかったようです。
今回は「1%」というケチな枠ではありますが、
日銀が物価上昇を目標にしたことで、今の株高の流れができています。

さて、ではインフレが仮にやってきたとして、
それが不動産や住宅の価格に及ぶだろうか、という問題。
今、不動産業種の株価が上がっているのは、明らかにそこへの期待です。
大手財閥系の様に、主力はビルの賃貸業である場合は、
オフィス賃料や入居率の上昇に期待していると考えることができます。
しかし、住宅分譲事業を主体としている企業の株価もかなり上がっています。
期待通り、不動産業種企業の業績は回復するでしょうか?
また、住宅を始めとした不動産価格は上昇するでしょうか?

これについて、私はかなり悲観的です。
一時的な現象として、都心の中古マンション価格が
「フワっと」上がった感じがすることはあるかもしれません。
去年の大震災の後、東京の山の手エリアではそういった動きが
ほんの少しだけ見られました。
「湾岸から山の手へ、富裕層が動いている」
「これからは、山の手住宅地の価値が上がる」
なんていう観測も一部にはあったように記憶しています。
慌てて熱海や沖縄にリゾートマンションを買っていた人もいました。
まあ、湾岸離れの流れはある程度定着していますが、
山の手住宅地の価格が上昇に転じた、とは思えません。

結局、不動産といえどもその価格を決めるのは市場です。
市場が、需要と供給のバランスが一致した価格を決めるのです。
インフレによって貨幣価値が下がると、
それに準じて不動産の価格も多少は上がるかもしれません。
しかし、現実的に不動産への需要が細っている限り、
絶対価値は下がっていくことは避けられません。
つまり、他の物価が上昇するほどには
不動産価格は上がらないだろう、というのが私の考えです。

不動産への需要を高めるために必要なことは、経済成長と人口増加です。
これからの日本に、この二項目はあまり期待できません。
経済はせいぜい維持するのが精いっぱい。
人口が増えるためには、今の社会が変質する必要があります。
また、私は無理に人口を増やすべきではないと思います。

結局、これから住宅を買おうとなさる方にとって
「慌てなくてもいい」という今の状況には違いがないわけです。


2012/3/9 16:28 Comments (0)

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