都心の再開発が招く、二子玉川や豊洲のバブル崩壊

東京の都心はどんどん変わっていきますね。
先日、ワテラスというタワーマンションが完売しました。
私はそもそもタワーマンション自体があまり好きではありませんが、
東京のまん真ん中に立つワテラスのような物件なら、まあよしとします。
何といっても、土地に限りがありますからタワーでも仕方ないでしょう。

何度も書いていますが、タワーマンションというのは「必要悪」。
土地が狭いところに大勢で住もうとするのなら、致し方ない建造形態です。
ところが、埼玉の小手指だとか千葉の八千代市などに
タワーマンションを作っているのを見ると「なんじゃそりゃ」と思います。
神奈川の相模大野でも「別にいらないんじゃないの」というのが正直なところ。
東京でも、湾岸の有明などはタワーマンションに不適な場所。
いくらでも土地が余っているのに、
わざわざあんなに醜悪な建物を作る必要は何もありません。

では、どんな建物がいいのでしょう?
一例を挙げれば、東雲のキャナルコートなんて素敵だと思いますよ。
あれは昔の住都公団が作ったものですが、
彼らの数ある実績の中では出色の出来ではないでしょうか。
もっとも、最近その端っこに出来上がっている
何本かのタワーマンションはいただけませんが。

六本木3丁目には昔、日本IBMの本社がありました。
ここを再開発する組合設立の認可が下りたそうです。
つまり、事業化が事実上決定したわけです。
地上40階建ての超高層オフィス棟と住宅棟、商業棟を建設するそうです。
事業主体は、あの住友不動産だとか。
まあ、いいのですが住友さんは晴海の再開発とか
有明の計画だとか、いろいろとでかいプロジェクトを抱えていますね。
それでいて、普通の100-200戸くらいのマンション計画もいっぱい。
今頃完成している物件もワンサとあるようで、傍から見ると
「手が回っていませんね」という状態。
まあ、六本木の計画は場所も一等地。
六本木1丁目の駅とは連結するそうですから、
よほどのヘマでもしないかぎり失敗はないでしょう。

一方、三井不動産と三菱地所、新日鉄都市開発(興和不動産と合併予定)などは地下鉄の春日・後楽園駅前に40階建て、22階建て、13階建ての3棟のマンション(合計 740戸)を建設なさるのだそうで。
地下鉄3路線の駅と直結するから、これもまずまずの一等地。
あの文京区役所に隣接するエリアです。

三井不動産レジデンシャルは、私が眺めている範囲では
あまり無謀なプロジェクトはなさっていないように思えます。
お作りになるタワーマンションも、
住友さんに比べればかなり品がいいですね。

しかし、三菱地所レジデンスは藤和と合併したあたりからちょっと迷走気味。
晴海の開発はもっと以前から計画されていたものでしょうが、
あっちこっちに疑問符のつく大型プロジェクトを散見します。
「ザ・パークハウス」と聞くと、注意警報を鳴らした方がいいでしょう。
長谷工プロジェクトもかなり多いようですから。

ただ、この春日・後楽園の計画については、まあ大丈夫でしょう。
千代田区のワテラス並みとは言いませんが、
文京区はタワーマンションが少ないエリア。
よほどの高値に挑戦しない限りは、ニーズを掴めるはずです。
また、あの場所だったらタワーマンションも致し方ないと思います。

しかし・・・都心部では住宅の『床』がどんどん増えますね。
ちょっと前に、リクルート創業者の江副浩正氏が
『不動産は値下がりする!』という著書で書かれていた通りの展開。
これから本格的に都心への人口再流入が始まりそうです。

私の拙い予想では、これからは都心の再開発はますます増えると思います。
実は、山手線の内側にはまだ再開発できそうな場所がいっぱいあります。
そして、「都心に住む」という魅力は、いつの時代も人を惹きつけるはず。
例えば「二子玉川に住む」とか「豊洲に住む」などというのは、
「六本木に住む」や「後楽園に住む」と比べれば
月とスッポンほどの落差があるのです。
ところが、今までは価格が高すぎて普通の人は都心に住めませんでした。
だから「都心も羨む」とか「都心近接の湾岸エリア」などと謳い、
普通の中でもちょっと所得の高い人々を「都心気分」にさせてきたのです
それでうまく乗せられた人はオセロ中島並みとは言いませんが、
うまく洗脳されたことにはちがいなし。
しかし、実態を見れば二子玉川は多摩川の川っぺりであり、
豊洲はちょっと薄汚れた埋立地をお化粧し直した場所。
ともに、本物の都心とは比べようもない辺境の街でしかありません。

これからの時代、この国の生産年齢人口(15-65歳)は、
加速度的に減り続けます。
逆に、都心の住宅床面積は毎年着実に増え続けます。
したがって、それを使用するためのコストは下がらざるを得ないでしょう。
つまり、買うにも借りるにも、どんどん安くなるのです。
これまでだったら二子玉川や豊洲に住まざるを得なかった人々が、
今後5年10年の内に山手線の内側まで入ってこられるはず。
現に、一部でそういう現象が起き始めています。

ここ数年、二子玉川や豊洲の不動産価格は実力以上に上がっていました。
ちょっとしたバブルといっていいかもしれません。
二子玉川ではすでにバブルの崩壊の兆しが認められますが、
豊洲は例の住友不動産が意地を張っているせいで、
表立った現象を目にすることはできません。
しかし、いかな財閥系企業とはいえバブルを無理やり維持するのは不可能。
いずれ崩壊するのは自明でしょう。

都心の再開発は、この東京という街が
活力を絶やさないために必要な新陳代謝現象です。
六本木や春日の再開発事業決定は喜ばしいことだと思います。
しかし、そこでちょっと前の二子玉川や豊洲の様に
市場に逆らった販売価格を設定することは
この街の成長を不健康にする反社会的な行為。
事業主体となる企業には、くれぐれもバブリーな発想に
染まらないようにお願いしたいところです。


2012/3/30 17:47 Comments (0)

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