日本とギリシャの危険な共通点とは?

人間の抱えている多くの「問題」は大概の場合、
それを「問題」だと思わなければ「問題」ではなくなることが多いもの。
そして、「問題」だと騒いでいることよりももっと深刻な本当の「問題」は
深く静かに潜行していて、ある日突然ドバッと噴出したりします。

その昔、日本とアメリカが「安全保障条約」を改定するときに、
これを「大問題」だと大騒する猛烈な反対運動が起こりました。
連日のごとく徒党を組んで街中で騒ぎを起こし、
警察の機動隊と衝突して死人まで出したと記録に残されています。
彼らが「大問題」だと大騒ぎした口実は、
「安保条約を結べば、日本は戦争に巻き込まれる」というもの。

日本はアメリカと安全保障条約を結んですでに半世紀以上。
その間、アメリカはあっちこっちで散々戦争をやらかしました。
今も戦争をしている、といえばそういえなくもない状態ですね。
まあ、必要な戦争もあったのでしょうが、随分くだらないのもありました。
その是々非々はまたの機会に触れるとして、
日本は一度でも戦争に巻き込まれたでしょうか?

冷静に、あの条約の条項をひとつひとつを読めば、
日本が戦争に巻き込まれる要素は極めて少ないと分かります。
日本が戦争の当事国になるような時には、
世界中で大戦争が起こっているような状態の時だけです。
あの時代、街中で「アンポー、ハンタイ」と叫んでいた学生や、
「わが子を戦場に送りたくない」と金切り声で叫んでいた
ヒステリックなおばさんたちは、
あの条約の条文をすべて読んでいたのでしょうか?
私は、まずそういうことはないと思います。
きっと、「○○さんがこういっているからきっとそうなのだ」と思い、
そんな「空気」に流されてああいう騒ぎに加担したのではないでしょうか?
アンポに対する賛成と反対の意見をキチンと精査した上で、
自分がいかに行動するのか決めたのでしょうか?

今年の夏、関西方面では電力が15%程度不足するといわれています。
ご存知の通り、原子力発電所が動かせなくなっているからです。
多くの人が原発を「問題」だと騒いだせいです。
福島第一原発で起こったことが、他のすべての原子力発電所でも
起こると考えた人々がこれを「大問題」だと騒ぎ、
世間の有象無象が付和雷同しています。
日本人大方の知性は「アンポー、ハンタイ」の時代からまったく進歩していません。
本当に情けないことです。

私は自分が日本人であることを常に誇りに思っています。
世界でもまれに見る聡明で高潔な民族であると信じています。
しかし、我らの最大の弱点は政治的な冷静さに欠けること。
別の言い方をすると、合理主義的な発想と行動が足りないのです。

もっとも、日本人よりもこのセンスに欠ける民族は多々あります。
というより、日本人より合理主義精神で勝っているのは、
唯一ゲルマン系諸民族だけかもしれません。
国でいえば米、英、独、豪、スイス、オランダ、スウェーデン、ノルウェー等々。

この国の政治屋どもも、そのことをよく承知しています。
理論的に理解しているというよりも、肌身に染み付いているのです。
なにせ、彼らは数年に一度は選挙区の隅々を走り回って、
情緒的にしか物事を考えられない有権者に頭を下げ、握手をしまくりますから。

私は、福島第一が引き起こした史上まれに見る人災を軽んじるつもりはありません。
しかし、同じ津波がもう一度やってきたら、また同じことが起こるのでしょうか?
いくら東京電力が不誠実な企業だとしても、そこまでバカではないでしょう。
福井県の原発も、当然海際にあります。
日本海側では大きな津波がやってきたという記録はあまり聞きません。
でも、この大人災が起こったことで、20メートルや30メートルの
津波がやってきたことを想定した対策を立てるはずです。
関西電力という会社をよく知りませんが、それをしないほどバカではないはずです。
なのに、原発を停めなければいけないのでしょうか?

「アンポ」の時もそうだったようですが、
多くの日本人は一部の扇動者の言辞をそのまま無邪気に信じています。
「アンポ」は日本を戦争に巻き込むのではなく、
むしろアメリカの庇護の下に平和で過ごせる条約だったことについて、
今の大方の人々は異論がないはずです。
つまり、同じ条約でも見方を考えれば見え方も180度変わるということ。
この原発問題も、今の「アンポ」みたいなものです。
見方によっては危険極まりなく見えますが、実際はひどく有用なもの。
それを「アンポ」の時には何とか良識的な結果(条約改定の実現)となったのに、
今回は非常に愚かしい結果(原発停止)になってしまいました。
この誤った選択によって、日本は衰亡の速度を速めるのではないでしょうか?

現在、日本の「原発停止」と同様に愚かしい
国民的判断をしようとしている国があります。
それは、他ならぬギリシャ。
すき放題に出鱈目をした挙句、借金を踏み倒す準備をしています。
次の選挙で緊縮反対派の党が勝利すれば、ユーロ離脱となりかねません。
まあ、ユーロ自体が多分に政治的な打算の産物なので、
今回もECBはギリシャのワガママを聞いてごね得になる可能性あります。
しかし、最悪のシナリオはユーロ離脱、あるいは追放。
そうなれば、ギリシャ国内の通貨はドラクマに逆戻り。
もちろん、これまでECBが貸したお金は全部踏み倒し(デフォルト)。
国内ではハイパーインフレが起こるでしょう。
すでに「取り付け」状態に入ったという報道もあります。
ユーロ離脱は結局、あの国の経済の著しい衰亡を招きます。
まあ、中長期的には回復するでしょうけれど。
ギリシャの例は民主主義というものが時にただの集団発狂になることを示す
格好のケーススタディではないでしょうか。

ひるがえって、日本。
原発を停めれば、確かに事故が発生する確率は低下するでしょう。
その代わり失うものは3兆円以上の国富。
みなさんの家庭の電気代も平均で15%程度は値上げになるはずです。
もちろん、全国一律一斉にそうなるわけではありません。
しかし、いずれきっちりとツケは払わされます。

人間というのは、基本的に安易な選択に走りがちです。
とりあえず、原発を停めておけば事故は起こらない、と無邪気に考えます。
でも、停止中の原発にテロを仕掛けられればどうなるのでしょう?
それこそ、福島第一以上の放射能漏れを招くことも十分想定できます。
では、原発をテロから守る対策は取られているのでしょうか?
原発に対してよく訓練されて重火器を供えた武装集団が襲ったとして、
自衛隊はどれくらいの速さで駆けつけられるのでしょう?
また、自衛隊の現場の指揮官の判断で発砲は出来るのでしょうか?
もし、その時にあのトンマなイラ菅みたいなオッサンが
首相だったらどうなるのでしょう?
実は、今の日本では原発をテロに襲われても、自衛隊の武装出動は総理の判断。
いかなる場合に発砲できるかの規定も曖昧。
北朝鮮の特殊部隊が原発を襲っても、自衛隊は有効に防衛出動が出来ないでしょう。
日本海側で30メートル以上の津波が発生するよりも、
北のゲリラが原発を襲う確率のほうが何万倍も高いと考えるべきです。
何といっても、彼らは国を挙げて核兵器を作ろうとしているのです。
自然の脅威も侮れませんが、害意を持って武装したゲリラ部隊の方が
我々にもたらす厄災はもっとひどいものになりそうです。
いってみれば、これは多くの日本人が理解していないけれど、
深く潜行していて、そのうち噴出する大「問題」です。

大阪の橋下市長は原発の安全性などをうるさく追求するよりも、
大飯原発が武装ゲリラに襲われた時の対処法を政府に求めるべきです。
その方が大阪市民の安全を守るためにはより重要なこと。
もちろん、福井県民、滋賀県民、京都府民、大阪府民などの
安全すべてにかかわる重要事項ですが。

大事なことを見逃して、些細なことで大騒ぎして無駄なエネルギーを使う。
国民が賢くなれば回避できることです。
誤解のないように書いておきますが、
私は原発も安保ももろ手を挙げて賛成しているワケではありません。
その時々に必要なものを上手に使っていけばいいのです。
原発よりも安全で経済的な発電手段を早急に開発すべきだし、
自国の防衛はあくまでも自国軍で行うべきです。


2012/5/19 0:02 Comments (1)

1件のコメント

「アンポ」「アンポ」と叫んでる人達はアンポンタンと言うことで。日本人は確かに合理的ではない。打算的な生き物だ。

2012/05/19 00:42 | by 政治の季節

RSS feed for comments on this post.


Leave a comment

※こちらへ書き込みいただいたコメントは、承認後全て表示されます。
マンション購入に関する個別相談等こちらへ表示させたくない場合は、
専用フォームからお願いいたします。