滞納されやすいリゾートマンションの管理費問題

近頃、マンションの「限界」について、
書いたり話したりすることが多くなりました。
私たちは「区分所有」という概念を受け容れて約半世紀。
初期の頃に建てられたマンションはどんどん老朽化していっています。

今まで全国で200ちょいの建替えが行われたようですが、
その背後には数万棟の老朽マンションが残されています。
それらの老朽マンションが今後どうなるのか?
およそ答えのない大問題です。

鉄筋コンクリート造の建物は、そう簡単に壊れません。
キチンと手入れをすれば100年くらいは持つでしょう。
関東大震災後の復旧事業のひとつとして建てられた
同潤会アパートの最後のひとつが最近取り壊されました。
上野下アパート。築84年を数えていました。

今、築40年くらいのマンションが多くなってきましたね。
第一次のマンションブームが1960年代、第3次は1970年代。
そのあたりに建てられたマンションが築40年から50年を迎えます。
多分、それらのマンションにはまだ多くの人が住んでいるはず。

一方、30年くらい前から「リゾートマンション」なるものが現れました。
私は未だにリゾートマンションの存在意義が理解できません。
「別荘を買うには高すぎるからマンションを」
ということから生み出された商品なのでしょう。
でも、そもそも別荘を買えない方はさほど裕福ではありません。
そういう方は毎日懸命に働かなければいけないし、休みも多く取れません。
せっかく買ったリゾートマンションを、年に何日利用できたのでしょう。

つまり、リゾートマンションとは結局従来の別荘が
買えるほどに裕福な方か、企業の保養施設くらいのニーズしかなかったはず。
その割には、バブル期前後に大量供給されました。
それも、都会のマンションとさして変わらない価格で。

今、そういったリゾートマンションはどうなっているのか?
ひとことで言えば、大変困ったことになっています。
まず、資産価値が急激に下落しています。
湯沢エリアでスキーリゾートとして開発分譲されたマンションは、
だいたいが「値がつかない」までに価格が下落しています。
「タダ同然」という価格で売られている物件もたくさん。

熱海はまだいいですね。古くなっても500万円以上でしょうか。
でも湯沢やその他スキーリゾート系は悲惨な状態。
最初に購入した人は、もう60歳を過ぎてスキーもスノボもしないはず。
ただただ温泉に浸かるくらいでしょう。

さて、こういうリゾートマンションの一番の問題は管理費の滞納。
温泉付きにマンションの場合、管理費は普通の2倍くらいでしょうか。
50㎡のマンションの管理費が月に3万円以上する例もザラ。
平米単価が600円ですから、湾岸の豪華タワーより高いかもしれません。
温泉や大浴場が付いていると高くなっているケースが多いようです。

そこで日常生活を営む人は少なく、区分所有者の多くは都会に住んでいます。
管理費の滞納が発生しても、債務者が遠いところに住んでいると
督促などがスムーズにできないケースが多発しているようです。
これは非常に困った問題です。

普通のマンションの場合、管理費関係の債権には
「先取り特権」という、ちょっと特殊な回収法が認められています。
つまり、そのマンションが競売などに掛けられると、
競落代金から優先的に管理費を回収できるのです。
また、区分所有権を新たな取得した方は、
前の所有者が残した管理費債務を弁済することになっています。

つまり、滞納された管理費の総額よりもマンション自体の
売買価格が大きい場合には、回収できる可能性が極めて高いのです。
しかし、湯沢エリアの中古マンションの場合、
物件自体の売買額が10万円や30万円程度の場合もザラ。
これに対して、滞納された管理費の総額は
200~300万円程度の場合が多いと聞きます。
だから、管理費の滞納が起こった場合には、最終的に
回収が困難になるケースがたくさんあるようです。
そうした場合に、どうすればいいのか?

これは極めて深刻な問題です。
今のところ、この「管理費滞納額が物件価格を上回る」という現象は、
湯沢エリアを中心に発生している一部の特殊なケースに過ぎません。
しかし、不動産価格が下落する一方の地方都市や郊外のマンションでは、
今後年月を経るにしたがって徐々に増えていく問題でしょう。

滞納された管理費が回収できないとなると、
管理組合の収入が減ることになります。
当然、年間の予算も削減せざるを得なくなります。
1割や2割なら、管理の質を落とすことで何とかなるかもしれません。
しかし、それが3割を超えると必要な管理サービスさえ削らざるを得ません。
そうなると、そのマンションの資産価値はさらに落ちます。
つまり、あるレベルを超えると負のスパイラルに陥り、
やがてそのマンションは廃墟への道を辿ることになるのです。

皮肉なことに、限界マンションの先進エリアが湯沢。
やがてそれは伊豆半島や房総などの海浜リゾートエリアに広がるでしょう。
そして、都市の郊外へもヒタヒタと押し寄せてきます。
首都圏では、最初に千葉エリアに現れるはずです。
佐倉や四街道あたりにそれが到達するまでに何年かかるでしょう?
早ければ10年未満ではないかと思います。

さて、何事も先回りをして考えてしまう榊マンション市場研究所では
次回のセミナーのテーマを
「リゾートマンションの滞納管理費回収」に定めました。
この解決困難な問題をどう捉え、どう取り組むのか?

実はコレ、私にとっては「手に余る」問題です。
そこで、特別講師をお招きすることにしました。
リゾートマンションの滞納管理費を回収するにあたって、
多くの実績を積まれてきた専門家であり、弁護士でいらっしゃる
麹町パートナーズ法律事務所の神戸靖一郎先生。
当日は、先生の知見を交えた有意義なお話を聞かせていただけます。

リゾートマンションの滞納管理費回収セミナー開催

 

開催日時:2014年7月22日(火) 午後6時30分より

開催場所ビジネストランスファー会議室(:JR「東京」駅から徒歩1分)
(東京都中央区八重洲1-8-17 新槇町ビル6階)

主   催:榊マンション市場研究所

参加費用:お一人様 1,000円(税込)

定   員:10名 定員になり次第締切

セミナー内容
1 講演「リゾートマンションの現状と未来」 20分程度
講師 榊淳司(榊マンション市場研究所代表)

2 講演「リゾートマンションにおける滞納管理費の回収実務」 40分程度
講師 神戸靖一郎弁護士(麹町パートナーズ法律事務所)

3 質疑応答、その他ご相談 1時間程度

お申込みはコチラから

    日時

    2015年5月16日(土)(開場午後1時15分)

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    (例)〒104-0041 東京都中央区新富1-17-4山下ビル402

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    に榊淳司の連載コーナーが設置されています。


    2014/5/21 18:16 Comments (4)

    4 Comments

    まろたんさん、こんばんは。

    池上さん、私は選挙報道くらいしか見ません。
    あとはネットで彼の「教室」みたいなページを読みましたが、
    みんな知っていることを分かりやすく解説しているだけ。
    私が日曜日の食卓で家族に話しているような内容。
    コレ、けっこう受けています。
    子どもたちは私が歴史や政治のドラえもんみたいに見えるようで、
    「この前の明治維新の解説みたいにフランス革命を教えて」ときます。
    そんなもの、できません(笑)。
    まあ、池上さんのような社会教養派話術師のニーズはあるのでしょう。

    消費者のことを、この国の企業はずっとバカにしてきましたね。
    でも、消費者もバカなようで賢明なところもあります。
    日本のコンシュマーはわりあいレベルが高いと思います。
    でも、住宅についてはまだまだ。

    教養はお金で買えません。
    努力と時間と素質と心がけです。
    昔は上流階級しか持ちえなかった条件。
    今は庶民でも教養が持てます。いい時代。
    私は今より良くない時代に成長しましたが、
    実家が古本屋だったのが幸いしていると感謝しています。

    まあ、人生こもごも。塞翁が馬。

    ごきげんよう。おやすみなさい。
    今度、私の事務所飲み会にいらっしゃいませんか?

    榊淳司
    タレントの広告に騙されて湾岸のタワーを買います。

    2014/05/23 00:12 | by Sakaki Atsushi

    榊さま。

    時の人・池上彰がテレビで言い放っていました。
    「消費は、最大の投票行動である」と。

    その通り。
    1960年代の米国での消費者運動。
    ラルフネーダが全米の市民に対して訴えた。
    一分間に百万語。
    この消費者運動は、米国の多くの分野に変化を及ぼしたそうです。

    ひるがえって、我がニッポン。
    お客さまは神様です、などどおちょくられて、
    その田子作ぶりを、遺憾なく発揮させています。

    資本主義下の消費社会に於いては、
    消費こそは「YES」の意思表示です。
    命の次に大切なオカネを支払うことは、
    納税をも含めて、YESと是認することですわ。

    我々は、まず消費者として賢くならなければね。
    心からYESと思えないものに、オカネをつかうべきではない。
    これこそが、消費社会に於ける「教養」です。

    賢い消費の実践によって、社会は変わります。
    であるのに、乗せられてマンションを買ってしまう。
    そして、ネコも杓子も、とりあえず大学へと。
    「教養」は実践であり、オカネでは買えません。

    今、二〇代は賢い消費者になった言う論調あり。
    ほんとうに?
    お客さまは神様です、とおちょくられて、
    間抜けズラで笑っている田子作では、ないと?

    池上彰につられて、つい、グチってしまいましたわ。
    池上彰は「子ども新聞」の時代に、よく見てました。
    ここに来て一気に日銭を稼いでいるようで、
    慶賀に堪えません。
    よかったね。

    ごきげんよう。

    2014/05/22 20:57 | by まろたん

    まろたんさん、こんばんは。

    区分所有法ができて52年。
    私の歳と同じです。
    この国は、まだマンションの終わり方を学んでいません。
    これからですね。
    20歳の人間に、老後の相談と言っても無理な話。
    しかし、マンションの寿命は人間のそれと同じくらい。
    これからはマンションの老人病専門医や葬式ビジネスが生まれます。
    まあ、私もその周辺で生きる糧を探します。

    では、おやすみなさい。 榊淳司

    2014/05/21 23:12 | by Sakaki Atsushi

    榊さま。

    つまり人間ではなく、マンションの老後問題ですね。

    この分野でも、日本は経験がほとんどなく、
    現在でも専門家と言える人は、ゴク僅かなのでしょう。
    区分所有者も、大方は何も考えず買った人でしょうから、
    放心状態かと。

    今日の問題を予見していた人がいたのかもしれませんが、
    時代の勢いに無視・無力だったのでしょうか。
    いつの時代も、インテリは孤独ですね。

    改めて考えると「区分所有」という形態はクセモノで、
    売りっぱなしの営業形態は変わらないでしょうから、
    区分所有の根本=法律自体から調整しなければ、
    マンションの老後問題は、多難のままでしょう。

    とりあえず今さえ良ければと言うのは、ニンゲンのゴウですね。
    この点で、いわゆる「賢人」は、世にいないのかと。

    確かにハタチのワカモノに向かって、
    おのれの老後を思えと言うのは、
    我が身を振り返っても、笑うしかありませんから。

    ここは一番、いわゆるクロウトと言われる人が、
    区分所有法の調整、その他、法律制度の整備を含めて、
    「未来志向」で動いてもらうしかないでしょう。
    だって「敗戦処理」にしてしまったら、
    代償が大き過ぎますからね。

    とは言え、そこはそこで、
    敗戦処理ビジネスが生まれ、日銭を稼ぐ人びとが出てきて、
    それなりに回ってゆくのでしょう。
    ま、この人の世、割れ鍋にトジブタ、弥次喜多道中ですわ。

    ごきげんよう。

    2014/05/21 21:14 | by まろたん

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