「予告広告」は消費者軽視の温床だ!

マンション業界には、いただけない商習慣がたくさんあります。
その最たるものが「予告広告」というものです。
このブログで何度か取り上げた話なので、
「それ、前に読んだよ」という方はスルーしてください。
新規の読者さんのために書いています。

「まだ販売もしていない」という建前で大々的に広告を行い、
実は水面下では販売している、という奇妙な商習慣です。
これって、かなり公正取引の精神に反していると思います。
そんなことをマンション業界では平気で行っているのです。

ご存じない方のために簡単に説明します。
マンションの広告には「予告広告」と「本広告」の2種類があります。
「本広告」とは、普通の広告です。
「このマンションを0000万円で販売しています」
あるいは「0月0日から販売します」と告知をします。

これに対して、「予告広告」とは「まだ販売していません」というのが建前。
「0月下旬販売開始予定」なんていう販売スケジュールが表示されます。
販売価格はたいていのばあい「未定」。販売戸数も「未定」。
「へえ、まだ販売は先なんだな」と普通の方は考えるでしょう。

それでのこのことモデルルームに出かけていくと、
「担当者」と称する営業に「まだ本決まりではないのですが」
なんてもったいをつけられながら、
エクセルで作った価格表を見せられます。

「これ、いただけませんか?」とお願いすると
「お渡しするわけにはまいりません。よろしければメモしてください」
なんとも奇妙な商習慣ですね。それを写メする方もいます。
今の写メは高性能ですからね。
よく、相談者からそういう写メが送られてきます。

まあ、それはいいとして・・・・
その住戸が気に入ったそぶりを見せれば、営業に言われます。
「要望書を出していただけませんか?」
要望書というのは「私はこの住戸の購入を希望します」
みたいなことを書いてある書類。紙っペラ一枚の場合がほとんど。
多くの方は、これを書くと「申し込んだ」気分になります。

「要望書を先に出していただくと、他に希望するお客様がいらっしゃっても、なるべくご購入いただけるように努力させていただきます」
こんなことを営業に言われます。本音に翻訳しましょう。
「先に『買う』って言えよ。そうすりゃ他の客が欲しいと言っても、こっちでテキトーにごまかして違う住戸に振ってやるからよう。その代わりに、裏切らずにちゃんと契約しろよな」
まあ、こういうことです。

誰も見向きもしないようなマンションなら、こんなのはただの茶番。
でも、最近の都心エリアはミニバブル化。
富久クロスなんて、「買えない」客が大量に発生しました。
なんかデジャブ。20年くらい前のバブルを思い出しました。

ただ、ほとんどのマンションはたとえ抽選をしても平均1.何倍。
営業が巧妙に客を振り分けているとしか思えません。
つまり、買う側からすると強引に営業の売りたい住戸に
誘導されているのが実態です。

こういう販売側にとって都合の良い水面下での「調整」を
許しているのが「予告広告」というシステムです。
表向きは販売を行っていないので、客側からすると
何が行われているのかほとんど分かりません。

「情報の非対称性」、なんてコムヅカシイ言葉が使われています。
カンタンに言えば、販売サイドはすべて知っているのに
購入希望者は何も知らないで都合のいいようにはめ込まれる。
そもそも、売主と買い手は利益相反関係にあります。
つまり、本来は対立関係にあります。
片方のみがすべてを知っていれば、著しい不公平が生じます。

それを改善し、健全な取引を促すために
「公正取引」という考え方が生まれ、法が整備されました。
売主は出来る限り買い手に商品情報を公開して、
多くの人間に平等で公平な機会を与えなければならない。
それが「公正取引」の精神であり、原則です。
しかしマンション業界は、この考えに公然と背いています。

最初にモデルルームを訪れてから2週間ほどたつと、
営業から電話がかかってきます。
「価格が変わりました。少しお安くなりましたのでまたお出でになりませんか?」
「0000号室はいくらになったのですか?」
「それはお電話では申し上げられません。お越しくださればご案内できますので」
そういわれてホイホイ出かけていくと、
「○○様、お喜びください。0000号室は0000万円になりました」
みると、100万円ほど安くなっています。
「どうでしょう、100万円も安くなったのですよ。ぜひとも要望書をおだしください」

こういうのって、だいたいは最初からシナリオが決まっています。
大きなマンションの販売価格は、「予告広告」の期間中でも
ほぼほぼ確定している場合がほとんどです。
ただ、販売のテクニックとして「予告広告」を使っているだけ。
オフィシャルページにも本当はかなりの情報を出せるのに、
わざとスカスカにして客の注意を引きつけようとしているケースが多いもの。

「100万円安くなりました」
というのも、客をもう一度モデルルームに来させる餌である場合が多いもの。
もし、100万円高い価格で要望書がたくさん出れば「これはいける」と、
本来の価格よりも高く売ってその分を丸儲けしようという腹かもしれません。
何とも消費者をバカにした販売手法ではありませんか。

私はこういうおかしな商習慣について、もう6年も前から
様々な機会を捉えて発言してきました。
でも、一向改まる風潮はありません。
ますます巧妙化しつつあるとも思えます。

何千万円もの商品を売るのですよ。
もう少し商取引を透明化しようではありませんか。
そのためには「予告広告」なるシステムを一刻も早く廃止すべきです。
もしくは「予告広告期間中は、いかなる形でも消費者に価格を提示して購入を勧誘してはならない」くらいの厳格化を図りましょうよ。
今のシステムは、あまりにも消費者側に不利です!

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2014/6/21 15:02 Comments (6)

6 Comments

Takさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。
よくぞ私のブログを発見くださいました。
マンション屋というか、不動産屋さんというものは、
総じてあざとい手を使います。
そういうマンションは最初から価格が決まっているケースが多いので、
2期まで待っても条件は変わりません。
竣工まで売れ残れば値引きがあり得ますが。

詳しくは無料相談をご利用いただいても結構です。
これからもよろしくお願いします。

榊淳司

2014/06/24 14:09 | by Sakaki Atsushi

はじめまして。
先日にこちらを発見し、以来、興味深く読んでおります。

つい最近、マンションの購入を考えて、
某物件のモデルルームに足を運んでいるのですが、
今回の記事とまったく同じ流れで、正直、血の気が引きました(苦笑

モデルルームに足を運び、最初の価格を紹介され、
部屋の希望を聞かれたので答えたら、
何回か後に100万の値引き案内。
今、要望書をもとに話が進んでいるところです。

まだ手付かずの状況から、希望の部屋を抑えることができそうで、
あまり後悔はないのですが、騙されたのかな〜と思ったり。。。

いったん身を引いてみて、第二期以降の価格の動向を伺った方が無難でしょうか。。。

2014/06/23 23:08 | by Tak

まろたんさん、こんにちは。

なるほど、結婚ですか。
昨日も、とある方の相談を受けておりました。
一途に悩んでおいででしたね。

確かに「住んでみて良ければよい」というのが真実。
この国は住まいを金融資産にして弄んできました。
いままた、ミニミニバブルで同じ轍を踏もうとしています。
何とも虚しい騒ぎのように思えます。

「見える」という悟りの境地は遠いですね。
私はまだまだ迷っています。

グーグルサービス、あまりよく知りません。
でも、あの企業は何かレボリューションを起こそうとしていますね。
今、あの辺の企業で最も取り残されそうな楽天のような気がします。

これからどうなることやら。
私にはさっぱり予想が付きません。
不動産価格が中長期で下落することだけは確信していますが(笑)。

それではまた。ごきげんよろしからんことを。

榊淳司
まさに伴侶を決めるようなもの。

2014/06/23 12:16 | by Sakaki Atsushi

さちぼんさん、こんにちは。 コメントをありがとうござます。

多くの方は気づかずに誘導されています。
何とも腹立たしいけれど、
不動産屋というのは「騙される方が悪い」という感覚なのです。
この業界、いつまでも進化しません。

これからもよろしくお願いします。

榊淳司

2014/06/23 12:07 | by Sakaki Atsushi

なるほど、そういうことだったのですね。

先日某大手デベのモデルルームを訪れたところ暫定的な価格表を見せられ、ここの住戸は希望者も多いのでこれよりも数十万程度価格が上がるかもしれませんが是非この住戸を希望されたいお気持ちですか?と。

おそらく私にこの住戸を出来るだけ確実に高く買わせたいのだろうなぁと考えてみました。
さすがに要望書と言わないだけ良いのですかね。

先生のブログ毎回興味深く拝読させて頂いております。
確かに予告広告はいらないですね。

2014/06/22 20:14 | by さちぽん

榊さま。

例えば電化製品や自動車と異なり、
不動産はそれぞれ世界に唯一無二のものです。
ですから価格はあってないようなものですし、また、
その売買取引に於いては、力関係がハッキリ出ます。
でもって、予告広告と言う販売テクニックも有効になり、
駆け引きの世界「おとなの世界」となります。

だから恋愛と同じで「惚れたほうが負け」ですわ。
いかに惚れさせるか、いかに惚れてないふりをするか。
なんてね。
ま、ふつうの生活者の人生に於いて、
滅多にない買い物ですし、高額ですからエキサイティグ。
もう高揚しますし燃えますわ。やはり恋愛ですよ。

いわゆる投資用はまだ余裕をもてますが、自己住居用の選択となると、
これはもう結婚相手選びのようなものです。
そんな「おとなの世界」ですから、
榊さまのご指摘はもっともであり、あるべき姿ですが、
難しいでしょうね。

ま、物件そのもので情報公開が徹底されていること。
販売者に物件自体の「責任」を徹底させること。
語弊ありですが、価格は、まさに「だましあい」であり、
ことの是非はともかく、仕方ないのでしょうね。

ところで、結婚とは「そそっかしい人」のやることで、
慎重熟慮、あれこれ考え過ぎると決断できませんし。笑。
住宅購入も、また似たような・・・。

余談ですが、
終の住処である老人ホームは明朗価格です。が、
その価値は、物件そのものよりも「サービス」にあります。
ですから、その選択はとても難しい世界でありトラブルが絶えない。
おそらくマンションの比ではないでしょう。

「住い」を選ぶのは結婚相手と同じくらい難しいですね。
価格は、できれば二の次にしたほうが悔いが少ないのでは。
価格にこだわり過ぎると、失敗の原因になりそうで。

更に付け加えますと、
終の住処である老人ホームの場合を考えれば明らかなように、
住処は、まさに「使用価値」がすべてあると思い切ることでしょう。
資産価値は「投資用」の場合であると割り切ることです。
住んでみて「良かった」と思えれば、それが「すべて」です。
畢竟、人生それしかない。
結婚もまた、そんなふうに思いますけど、ね。

ま、悟ったふうなことを言えば、若さは迷いですから。
トシを取りますと、その手の迷いは吹っ切れます。
その分、こころ穏やかになれます。
すべからく例外はありますが。笑。

悟り、達観などという高尚なるものではなくて、
残り時間に貪欲になるだけですわ。
そうすると「大切なもの」が見えてくる。
「ほんとうに大切なものは、目に見えないんだ」
と星の王子さまが言う「大切なもの」が。

詩人・アポリネールは言い残しています。

> きみは、自分の無知と愚かさに気づく前に、
> 楽しい旅も、悲しい旅も、したわけだ。

いやはや、
「見える」ようになるまでには、時間が掛かるようで。
ドン詰まりのお仕舞いは、ひとこと、
「これかあ」
ですか。笑。

何の話だったか、分からなくなりましたが。
ごきげんよう。

2014/06/22 06:54 | by まろたん

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