すべては「消費者軽視」体質に起因する

一昨日、昨日と、新潟県の湯沢方面へ出張っていました。
雨が降ったりやんだりの天気。傘は要りませんでしたが。
証拠写真は一枚もありません。撮りませんでした。
特に写真を取らなかった理由はありません。私の性分です。

一昨日の夕方に旭化成建材が調査結果を公表。
また、同時に杭工事大手の偽装も発覚。
出張中の私にも共同通信社から「有識者のコメント」を
求める電話がかかってきました。
エヘヘ。私、「有識者」ですって。

まあ、それはいいとして・・・・
マンション業界はちょっと厄介なことになっていますね。
これでまた大騒ぎかと思ったら、「折よく」ではありませんが
パリのテロ事件が起こりました。
しばらくマンションどころではないでしょう。
でもまあ、外国での出来事であり、今のところ日本人の
犠牲者はいないようなので、冷たく言えば他人事。
3,4日すれば世間の関心は国内に移るでしょうね。

パリの事件についてアレコレいうのは他の方に任せます。
本日、私は「有識者」としてまず「ル・サンク小石川後楽園」
について、アレコレと申し上げましょう。
まず、今回の「建築確認取消」という事態は異例中の異例。
全国でもこれまで二桁あるかないか、というレベルのはずです。

なぜ取り消しになったか、という建築基準法上のアレコレも
その筋の有識者に任せるとしましょう。私の専門のやや外側です。
私が言及するのは、なぜこうなって、今後どうなるのか?
この問題は非常に根が深いのです。

ことの起こりは平成15年に、あの土地をNIPPOと神鋼不動産の
元の会社がURの元の組織から競争入札で購入したことに始まります。
なんと12年も前の話。坪300万円で1360万円、総額45億円。
推定で一種100万円。まあ、当時としては普通でしょう。
建築費は坪単価60万円くらいの時代でしたから。

翌平成16年の7月には建築確認申請が出されたそうです。
8月31日には、建築確認が下りました。ここまでは普通。
ところが、反対運動の方々が11月に東京都建築審査会に審査請求。
なんと翌平成17年の6月に東京都建築審査会が確認を取消。
この時点で数少ない事例のひとつが起こっていました。

その後、もめにもめます。関連の裁判もあったようです。
ただ、事業者側も粘り強く事業化を進めてきました。
平成24年7月と26年3月には建築確認処分が下りて、工事開始。
今年の12月に完成予定で工事が進んでいました。
場所がいいので販売も好調。すでに完売しています。
ところが、反対派住民の請求に基づいて審査していた
東京都建築審査会が、まずこの9月に「建築確認の効力を停止」。
そして今回の「取り消し」裁決書の送付は12日だそうです。

結果としては、反対派住民側の大逆転ですね。
長年の運動の成果が、ここ半年で劇的に表れました。
もはや、このマンションを通常のスケジュールにのっとって
購入契約者に引き渡すことはできなくなりました。
まず、手付金の倍返しで解約を求めるしかないでしょうね。

今後どうなるのか?
まず、事業者側はこの土日も休まず協議しているはず。
今回の建築審査会の決定をなんとか覆すことはできないのか?
裁判に訴える道が残されているのかどうか、私にはよく分りません。
審査会の決定に従うのなら、建築確認を取り直して
新たな設計に基づいた工事のやり直し・・・・
あるいは、新たな設計図に基づいた補正工事でしょうか。

いずれにせよ、事業者が大きな損失を蒙ることは確実。
少なくとも、この事業は大赤字を喰らうことになりそうです。
まず、今回のことでゼネコンの過失はなさそうなので
建築費は100%支払う必要がありますね。
おいくらか分りませんが、相場通りなら約50億円。
土地の購入費が45億円。12年間の利息が推定約10億円。
事業主2社は、約100億以上の負担を強いられている状態で
今のところ回収はゼロ。今後の見通しは不明。負担額は増大必死。
中小の独立系デベロッパーなら倒産するレベルですね。

最近、メディアから私への取材で多くなったテーマは「業界の体質」。
くい打ち工事データの偽装事件も、数々の欠陥マンションも、
更に付け加えればこの確認取消事件も、根底には業界に根付く
「なにか不自然な体質」みたいなものがあるのでは? とういう方向。

もちろん、ありますとも。アリアリです。
私は20数年間、広告屋としてマンション業界に巣食ってきました。
広告代理店を通してマンションデベロッパーの仕事を、
それこそ「山のように」やってきました。
売上総額なら、何十億円も上げさせていただいたのです。

その間、あの業界の内部事情を窺い知る機会が多数ありました。
何度もここで書いてきましたが、そこにあるのは
自分たちの利益を最優先するご都合主義。
そして、そのためにはエンドさん(購入者)の利益など
最終的には「どうでもいい」という発想。

今回の杭打ちデータ偽装事件でも、売主であり、
購入者に対して全責任をとならなければならない
三井不動産レジデンシャルは、先日やっと会見。
それも、半期決算報告の記者会見を兼ねるという雑魚さ(笑)。
それがなければ「やりたくなかった」感、アリアリ。

なぜ、あの連中はあそこまで消費者軽視なのでしょうか?
私は、一番の理由はまっとうな市場競争がないからだと思います。
日本はついこの間まで「住宅不足」感がありました。
「マンションは抽選に当たらないと買えない」という時代は
わずか20数年前のことです。

その頃から、不動産屋は「売ってやる」体質。
「買っていただく」のではなく「買わせる」、「はめ込む」。
仲介業界では「殺す」という隠語を使いますね。
「殺す」とは「契約させる」ということ。

今は時代が変わりました。住宅はたっぷり余っています。
エンドユーザーが住宅を選べる時代、であるはずです。
でも、実際は違います。まだまだ「売ってやる」体質。
現に、新築マンションなんて今回のル・サンク小石川後楽園
のように、そのエリア内においてある条件で選ぶとすれば
「それしかない」状態の物件は、あっという間に売れます。
このマンションも、まさに「売ってやる」状態だったはず。

その結果、「買えた」と喜んだ方々は、間際になって
「引き渡しを受けられない」状態に陥ってしまいました。
何ともお気の毒な状態です。

反対運動の方々には敬意を表します。
「よくぞなされました」と思います。
実は、支援された弁護士さんも存じ上げているお方。
「やりましたね、先生」と申し上げたい気分です。

しかし、107戸の購入者さんたちにとっては、想定外もいいところ。
この責任、あの2社のデベロッパーは取れるでしょうか?
「倍返し」の手付金だけでも20億円くらいかかりそうです。
中には三菱地所レジデンシャルの南青山高樹町の事例に倣って
「3倍返し」を要求する契約者も出てくるでしょう。

マンションというのは、そもそもの価格が高いだけに、
事故ると損害額も半端なく高額なものとなります。
それだけに事業用地購入から設計、施工、販売、広告、契約、
そして引き渡しまで一つ一つの過程を慎重かつ確実に
仕事を進めなければならないはず、なのです。

しかし、いくばくか内部事情を知っている私からすれば
「へえ、そんなのでいいの」というシーンを数多く見ました。
消費者をごまかそうとする体質は、そのまま広告に表れますから。
ここ数年、そういう体質の膿が一気に出ている感じですね。

ただ、それは「氷山の一角」に過ぎません。
報道されないけれど「呆れ果てる」ような事件はたくさんあるはず。
多くは、購入者が自ら購入したマンションの資産価値を守るために
「表沙汰にしない」方向に持って行かざるを得ないだけ。
デベロッパー側も、そこに甘えています。まことに遺憾。

ひとつ断言できること。
こういう売主企業側のチョンボによる事件は、
これからも起こり続けるだろうし、
それがなくなることはありえません。
なぜなら、デベロッパーの「消費者軽視」体質は変わらないから。
要は、今回の一連の事件のように表沙汰になるかならないか、
ということであって、事件は常に起こっているはずです。

さて、資産価値レポートの更新情報です。
今回は「渋谷区」を最新情報化。
私は、東京の最も魅力的な住宅地があるのは
港区でも世田谷区でもなく、渋谷区だと思っています。
ただ、この渋谷区には中々お手頃な物件が出ませんね。
それでも、「出モノ」を探して今回も最新物件を入れました。

渋谷区総集編
価格 4,290

■ピアース初台センティア、■パークコート渋谷大山町 ザ プラネ、■オープンレジデンシア代々木ザ・ハウス、■ヴァントヌーベル代々木、■オープンレジデンシア初台、■シティハウス恵比寿伊達坂、■シティハウス神宮北参道、■プラウド恵比寿南、■リビオ笹塚、■シティハウス広尾南、■THE CONOE〈代官山〉

11月29日の土曜日に、いつものバリ島不動産セミナーを開きます。
少人数開催です。現在、参加予定者4名。
セミナー終了後は、軽く飲み会を開きます。
どうぞみなさん、お気軽にご参加ください。
来年にはまた、私が同行する「バリ島不動産視察ツアー」を催行予定。
そのスケジュール調整も、セミナーの参加者さんと行う予定です。

バリ島不動産セミナー開催
11月29日() 午後2時より

「榊淳司のお奨めマンション速報」

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2015/11/15 10:25 Comments (4)

4 Comments

まろたんさん、おはようございます。

せんじつめれば、貧困・・・・まことに、御意。
アメリカを憎む。西欧を憎む。
それ、すべて嫉妬ブタ的な感情ですね。
イスラムは、かつて世界の先進エリアを築きました。
ローマ以後、キリスト世界に対して優位。

ところが、ここ200年は冴えませんね。
その恨みつらみが累積されているような。
中国と朝鮮半島の連中が日本に対して抱いている
あの下劣な感情と似ているといえば、似ている。
それこそ、嫉妬ブタと同根です。

テロは無くなりませんね。
貧者の最後の選択肢ですから。
持たざる者、には同情しますが、
嫉妬ブタとなっては致し方なし。
ただ世間に忌み嫌われるだけ。

傍観者としての一日を始めます。

ごきげんよう。 榊淳司

2015/11/17 10:51 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

今回のこと。
ギャーギャー騒いでも、おばさんレベルになり果てます。
で。
アホな、おばさんになりたくなり人は、さて、何を?
「ブランドこそバンザイ」の「洗脳」から抜けることでしょう。

三井・三菱・住友・安田、なーんて言ったところで、
チョイと遡れば、たかが「百年・ちょぼちょぼ」。
その、ご先祖さまたるや、食いぱっくれのタミ草。
ド貧民のなれの果て、ですよ。(笑)

ま。こういった自立心たるや。
オナゴはんには無理筋でしょうがね。
無理筋はともかくも。これだけは、ひとこと。

どう成り果てようと、
「泣きごと」だけは「アウト!」ですよ、と。
「自業自得」は世の常、でっせ。(笑)

さてさて。
海外に飛んで、パリ。
パリの小市民も「あまーい」あんみつ姫。
あれでは、ヤられます。
まるでヤられるのを、期待しているようなもの。

ま、痛い目にあって、しばらくは考えるでしょう。
が、
少したてば、またぞろ「あんみつ姫」に戻る。
あまーい。
そんなもんです。バカは。(笑)

で、ひとつだけ、シビアのことを。

テロは「テロリスト側が、絶対優位」です。
ですから、守りきれない。
テロリストに狙われたら、アウト!
自明です。
これは、テロがなくならない理由でもあります。

今回の事件、さまざま論評する御仁あります。
が、煎じ詰めれば、
そのすべての根っこには「貧困」があろうかと。
だって「金持ちケンカせず」(笑)
でしょう。

まさに「成長は、すべてを癒やす」
金さえあれば、ですが。
そんな日は、永遠に来ませんわな。(笑)

ごきげんよう。

2015/11/16 22:01 | by まろたん

まろたんさん、おはようございます。

パリのテロで助かっているのはジャパンパイル。
まあ、マンションが傾いていも、今のところ人は死にません。
ただ、多くの方の人生を狂わせます。
三井不動産レジデンシャルがやったことは、
テロと言うより壮大な「手抜き」。
悪意はありませんが「未必の故意」。

今週、先が読めません。
もうすぐ株式市場が開きます。
どうなりますか。500円くらい下がるでしょうか。

ところで、いただいた雑誌が面白い。
今週、読ませていただきます。

なんだか、今週もざわつきそうな予感。
このザラザラした感じのまま年末に突入するのですね。
去年よりあわただしい感じです。

それではまた。 ごきげんよう  榊淳司

2015/11/16 08:57 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

> 巨悪は眠らせない。

元検事総長・鈴木栄樹の所信表明の言葉。
30年前のことですな。
さて。巨悪とは?

このたびの三井不動産Rの悪行こそ「巨悪」です。
組織的巨悪です。
これを巨悪と言わずして、他に巨悪がありましょうか。

「巨悪は眠らせない」
その通りです。
「眼にはメを。歯にはハを」
金を払えばすむことではありません。
「目んたまを抜かれ、歯を抜かれて」当然の巨悪です。

国家も、社会も、組織も、
「魚はドタマより、腐る」
と言います。
われら日本人は「腐った魚」の処理法を間違っていけません。

甘くなってはいけません。くれぐれも。

パリでイスラムのテロ7が。
わが日本国では、三井不動産Rの「テロ」が。
あえて言います。
流血こそありませんが、その悪意たるや「テロ」と同じ。
冷えびえとした「テロリスト」の心、そのものです。

お人好しだからなあ。ニッポンのタミ草は。

ごきげんよう。

2015/11/15 15:19 | by まろたん

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