今の欧州はアウグストゥスの時代と違う

予想外、と言えば予想外です。英国のEU離脱。
残留派議員が離脱派の運動員に射殺されたことで、
流れは残留へと変わったかと思ったのですが、違いました。
投票率72%超というのは、離脱派の怒りと残留派の危機感の表れ。

これによって、EUは危機を迎えたといえます。
今の市場はパニック状態ですね。まさかのまさか、だから。
しかも、金曜日です。今は東京とアジア諸国の市場が開いているだけ。
このあと、ヨーロッパ市場が開きます。さて、どうなることやら。

私は池上彰先生みたいに博識ではありません。
しかし、EUというものを自分なりに捉えています。
それは、彼ららしい「理想主義」の賜物である、ということ。
私らアウトサイダーからすると、別にヨーロッパがひとつに
なる必要なんて、何もないではないですか。
しかし、彼らの理想は「ヨーロッパはひとつ」というもの。

◆杉山寧「エウロペ」オフセット複製・木製額付・即決◆_名作

三島由紀夫の岳父である日本画家・杉山寧の代表作に
「エウロペ」というのがあります。
裸の美女が屈強な馬の背に座っている構図。
ご存知の方も多いと思います。

ギリシア神話では、絶世の美女であるエウロペに惚れ込んだゼウスが
馬に化けて近づき誘いかけた、ということになっています。
エウロペがゼウスの化けた馬に乗って世界を飛び回ったとか。
その範囲がエウロペ=ヨーロッパになったそうです。
何ともギリシア神話らしいお話ではあります。

ヨーロッパ人は「自分たちはヨーロッパ人だ」という自覚が多少あります。
例えば第二次世界大戦前の東京には、ヨーロッパ人の社交界がありました。
溜まり場は帝国ホテルだったとか。まあ、さもありなん世界。
そこに、「日本は北ではなく南に向かう」という近衛政権の方針を
ソ連に伝えたスパイ・ゾルゲも属していました。ドイツ人として。

キリストが生まれた頃のヨーロッパは、ほぼローマ帝国の領土でした。
ローマ帝国はヨーロッパどころか北アフリカや今のシリア、イラクあたりまで
長らくその版図に収めていたのです。当時、イスラム教はありません。
ヨーロッパの人々は、自分たちはギリシア、ローマの子孫だと思っています。

私たち日本人は、高校の国語の授業で漢文を習いますね。
あれは古代の中国語をレ点などで同時翻訳したものです。
ヨーロッパ人たちは、ラテン語かギリシア語を学びます。
ラテン語は言うまでもなく、古代ローマの言語。
今のイタリア語の祖先みたいなもの。
だから、イタリア人にとってラテン語は「古文」なのです。

ローマ時代の全盛期はアウグストゥスの時代。
ちょうど、イエス・キリストが活動を始めた頃に世を去った人。
多くのヨーロッパ人にとって、彼方の理想時代です。
EUができた頃、私は「なんじゃそれは」と思いました。
あんなに多種多彩な国家の集まりがワンユニットになれるはずがない、
と私のリアリズムは叫んでいました。
何と言っても同一通貨です。国境も、ほぼなくなりました。

しかし、ヨーロッパ人たちは「ひとつのヨーロッパ」を望んだのです。
ちょっと無理があったのではないでしょうか?
アウグストゥスの時代も、ヨーロッパはバラバラでした。
しかし、あの頃は強烈な宗教がありませんでした。
今のヨーロッパは、宗教ひとつとってもかなり鮮明に分かれます。

「ほとんどはキリスト教徒ではないか」
日本人から見ると、そうなるでしょう。でも違います。
キリスト教は、大きく3つに分かれています。
新教と旧教、そして東方教会。
この3つは「違う宗教」と言ってもいいでしょう。

17世紀の半ば、日本はポルトガルとスペインの宣教師を追い出しました。
あるいは捕らえて棄教を迫り、応じなければ残酷な方法で処刑しました。
ところが、オランダ人とイギリス人とは商取引を続けました。
そのうちイギリス人は来なくなったので、オランダ人とだけ交易しました。
当時の日本人は、旧教徒であるポルトガル、スペイン人と
新教徒であるオランダ、イギリス人が「違う」と見分けたのです。

カソリックという宗教がローマ人をダメにした、と私は考えています。
アウグストゥスの時代のローマ人と、今のイタリア人は別人種のようです。
ローマ時代、ヨーロッパ最強のローマ軍は「兵站で勝つ」と言われました。
あるいは、首都ローマはもちろん、征服した都市で緻密な民政を敷きました。
彼らは、真面目かつ堅実にやるべきことをやれる民族だったのです。
その着実な仕事ぶりが「兵站で勝つ」という表現になっています。

今のイタリア人はどうでしょうか?
日本人の感覚で言うと「ものすごーくいいかげん」ではないでしょうか。
カソリックが、古代の堅実なローマ人を、今のいい加減な
イタリア人に変えたのだと私は考えています。

カンタンにいえば、約束を守れなかったり、何かまずいことをやらかしても
教会に行って懺悔室で「私は・・・なことをしました」といって、
それを聞いた神の代理人である神父が「許します」といったらOK。
これだと、基本的になんでもOKになりますわね。
中世には、ある額以上の寄付をすると何でも許される「免罪符」
などというインチキ臭いお札が売られていました。

何が何でもそれはインチキだろう、と考えたのが
16世紀のドイツに生きたルターという神父。
そういった考えから新教(プロテスタント)が生まれます。
旧教(カソリック)との違いは、神様と契約(お約束)するのに、
教会(神父等)を介さいないで直接取引すること。

つまり新教では、神様と直接契約(お約束)します。
だから、新教徒にはいい加減なことをやらかしても、
懺悔室の許しはありません。神様に対して罪を犯したことになるのです。
これって、旧教徒とはかなり違うでしょう?

例えば、イスラム教の神様はユダヤ教の神様と同じです。
開祖マホメットは、自分が「最後の預言者」と名乗りました。
彼がユダヤ人だったのではないか、という話は前に書きました。
この2つの宗教は同じ神様をあがめ、同じ割礼という儀式を行います。
でも、全然違う宗教だとみなされていますね。
新教と旧教の違いも同様。同じキリストという神を崇めても、
まったく別の宗教だとみなすべきなのです。

ヨーロッパには新教と旧教、そしてユダヤ教とイスラム教があります。
それらはすべて一神教です。お互いに相容れません。
これに加えて、民族的な違いもあります。
ゲルマン系はだいたいが新教。ラテン系はほぼ旧教。
スラブ系は東方教会とイスラム教。ケルト系は旧教。
お互いにお互いを容れる、という寛容さはほぼありません。
アウグストゥスの時代とは、まったく違うのです。

そんなヨーロッパは、けっしてひとつになれません。
EUは、あまりにも理想主義に走り過ぎた組織です。
いずれまた、バラバラになる時代がやってきます。
今回の英国離脱の結果は、その「初めの始まり」かもしれません。

7月2日バリ島不動産セミナー開催

さて、恒例の「バリ島不動産セミナー」を7月2日に開催します。
会場は馬喰横山駅徒歩1分。
「セトル」さんという仲介業者さんが入るビルの4階会議室。
ご好意でお借りできることになりました。
以前の会場よりも狭いので、定員は10名です。

7月23日 (土)榊淳司の不動産売却ご相談会

を開催することにいたしました。
不動産の売却に関して、価格や時期でお悩みの方のご相談を
わたくしが無料で受けさせていただきます。
会場はバリ島不動産セミナーと同じところ。

開催日時:7月23日(土)13時~17時
開催場所:セトル 4階会議室
(東京都中央区日本橋横山町4−11 「馬喰横山」駅より徒歩1分)

7月23日土曜日の13時から17時まで、
私が相談会場におりますので、どうぞご自由にお越しください。
とくにご予約などは不要です。
ただし、順番におうかがいしますので、
ちょっと待っていただくかもしれません。

「榊淳司のお奨めマンション速報」

購読料 1ヵ月 1,590
※購読料金のお支払いはクレジットカードのみとなります。お申込みは コチラから  次のページの右下「カートに入れる」をクリックしてください

メルマガ


2016/6/24 14:55 Comments (6)

6 Comments

まろたんさん、こんにちは。

私の身近にいますよ、新選挙権取得者。
まあ、どこに入れるのかはだいたい想像できます。
喜んで、ころこんで、投票所に行くでしょう(笑)。

しかし、東京選挙区。入れたい奴がおりまへん。
政治家が随分と劣化しましたね。
まあ、半ば他人ごとになってきましたが。

今日はお疲れめなので、飲み会を断りました。
1年に一度あるかないかの珍事。

早めに帰って、お神酒を喰らって寝ます。

ごきげんよう 榊淳司

2016/06/28 16:48 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

KYOTO。ですか。

EU離脱。
あのキャメロンくんが「辞める」と公言したのはゴツイ。
もう、後戻りは出来ませんから。

さて。来る参議院選挙。
注目すべきは「18-19」の新選挙民。
で。

1.その投票率は?
2.どの党に、投票したのん?

こんなところですね。関心は。
ま、大筋では変わらないでしょう。
なぜって?
日本のタミ草よ。

「絶望が足らん!」と。

おきばりやすう。(笑)

ごきげんよう。

2016/06/27 12:36 | by まろたん

まろたんさん、こんばんは。

明日は揺り戻しで円安です。
だって、まだ国民投票の結果が出ただけ。
それも僅差。
さらに、最低2年は現状維持です。
経済が急に悪くなるわけじゃないのに、騒ぎ過ぎです。

しかし、これは「ショック」ではありますね。
これを機に、もろもろの危機が噴き出すかも。
特に、中国が怖いですね。

実は、またまた京都に来ています。
野暮用です。嫌になりますね、まったく。

ではまた ごきげんよう 榊淳司

2016/06/26 22:18 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

さてさて。明日は、
「ブラック・マンディ」となるのでしょうか?
まさか、
「ゴールド・マンディ」とは、いかんでしょうね。(笑)

「為替レート」。円高、円安。
で、何をもって円高・円安と。
もはや製造業は、おおかた「地産地消」でしょう?

為替レートに一喜一憂、振り回しされるのは「不毛」。
現地に出て行って「地産地消」。
わが国の「雇用」は奪われますがね。

ま、もはや、誰にも分からん時代になりましたね。
それを、大変な時代になったと思うか、
時代とはこんなもんだと突き放すか。

時代の変動がどうであれ、各界各層において、
「試される」時代が到来しつつあるような。
私は、しばし静観しつつ、御神酒タイムをエンジョイ。(笑)

ごきげんよう。

2016/06/26 21:46 | by まろたん

まろたんさん、こんばんは。

いやあ、今日はビックリ。
世界中がビックリ。
会うは別れの始まり、ですね。

これ、リーマンみたいにならないかどうか心配。
ヤーな感じですからね。
FXで大損こいだお方はたくさんいるでしょうね。
私はほぼ関係ありませんが。

このお騒ぎ、週明けまで続きます。
ひょっとしたら、正式離脱が決まるまでも。
経済への影響も、これから。
どうなることやら。

ごきげんよう 榊淳司
安倍自民、このままだと大勝ですね。
まあ、これも

2016/06/24 21:09 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

確か、こんな歌が。
> 別れるまえに、お金をちょうだい。

結婚は、それほど難しくありませんが、
結婚生活を続けるのは、大難儀です。

人も国もその他なんでも「歴史」をもっています。
で、くっつけば、その衝突があります。
これは大難儀です。

今、世界は人びとは、総じて「内向き」の様相。
米国も内向き。
「疲れちゃった」んでしょうかね?
「限界が見えちゃった」んでしょうかね?

まあEUも、よくもったほうでは有馬温泉?
別れるとなって、なんかスッキリしたような。
吹っ切れたような。
どんなもんでしょうか?

安倍自民。
なんか健闘しているような。
とすると「改憲動議」ということに。

ごきげんよう。

2016/06/24 20:51 | by まろたん

RSS feed for comments on this post.


Leave a comment

※こちらへ書き込みいただいたコメントは、承認後全て表示されます。
マンション購入に関する個別相談等こちらへ表示させたくない場合は、
専用フォームからお願いいたします。