「家を買う」のは、日本人の本能です。

日本人が「土地」や「不動産」というものに執着が強いのは、
多分にその農耕民族としての歴史的背景があると思います。
武士が生まれたのは、律令制国家の末期に、
開墾農民たちが自ら拓いた土地を武力で守る、
という実態的な必要性からだったと考えられています。

我々は今、不動産を所有すると法務局の登記所で所有権を登記することで
他人に対して「対抗」できる、と民法の講義で習います。
でも、実質的には「登記」こそが所有権の源であり、
それさえあれば自分で使うのも、他人に貸すのも、
担保に差し出してお金を借りることもできます。
でも「登記」がなければ、誰も所有権を証明してくれません。

日本は明治以来整えた「登記」という近代的な法制度によって、
土地の所有権を国家として保護してきました。
国内ばかりか、併合したお隣の半島でもこの制度を適用したところ
今では「日本人に土地を取り上げられた」と恨まれています(笑)。

これは今の憲法でも保障されている「私有財産権」という
地味だけれども近代社会にとってはとても大切な権利。
といっても、我々日本人は爺さん婆さんの代のもっと前から
当たり前にあるものなので、
ちっともそのありがたさが分かっていません。

例えば、今の支那ではこの「私有財産権」が確立していないので、
ある日突然「その住まいを立ち退け」とか
「お前の財産は没収する」なんてことが、
何の法的根拠も無く行われています。
日本の場合、政府が国の発展のために国際空港を作るためでも
手前勝手に土地を収用できません。だから・・・・
「成田闘争」とか「三里塚闘争」などという騒ぎになりました。
それは、私有財産権が当たり前のように認められていて
そうカンタンには排除できなかったからです。

でも、この「私有財産権」を確立するまでには、
様々な歴史的なエピソードが積み重ねられているのです。

それは、武士の存在が大いに関わっています。
まず、支那から取り入れた律令(土地公有)制度が崩壊しつつあった時に、
日本の歴史上初めて成立した武家政権である鎌倉幕府の主な仕事は
土地をめぐる支配権(徴税権)の争いを裁くことでした。
今でいう裁判所機能のようなもの。当時、「政所」とよばれた役所が担当しました。

この「土地(不動産)」を巡る争いが、日本史のほとんどといっていいでしょう。

日本人は米を食べます。今でも、ほぼ主食。
米ができるのが田んぼです。
田んぼは、かつて日本人にとって最も大切な不動産。
日本人に多いでしょ、苗字に「田」が付く人。
ついでに言うなら「米」が付く人も多いですね。
野菜を作る「畑」「畠」は、米を作る田んぼより一等下に見られたので
この字を使う苗字の数は「田」や「米」と比べて少ないようですね。

まあ、そんなことは余談です。
例えば、江戸時代の日本は「米」本位制です。
価値の基準が、円やドルではなく、「米」なのです。
殿様に仕えるサムライの給料の単位は「三十俵」などという「米」の量です。
彼らに「米」を与える殿様でさえ、その「格」は領地で取れる米の多寡で決まります。
最大の大名である加賀の前田家は分家も合わせて100万石。
土佐の山内家は22万石。
忠臣蔵の赤穂浅野家は6万石。
大名ではなく旗本である、鬼平犯科帳の長谷川平蔵なら500石。

つまり、領地の田んぼの広さが侍の「格」を決めたのです。
そして、実際に田んぼを耕している人は・・・・

その田んぼを人に貸しているのか、所有して耕しているのか、
人から借りて耕しているのか、あるいは雇われて耕しているのか・・・
百姓にも「所有」をめぐるヒエラルキーが存在したわけです。
何といっても、江戸時代まで日本人の8割方は農民ですから。

明治維新という革命が起こってから、およそ140年ちょっと。
我々の5世代ほど前は、ほとんどが農民だったワケです。
「土地(不動産)を所有する」ということへの執着は
まだかなり濃厚に我らのDNAの中に残っているといっていいでしょう。

「田んぼを持っている」は今、「家を持っている」に
ある程度置き換わっているような気がします。

「家を買ったんです」

そのセリフには、何か誇らしい感じが漂っていますね。
私は、日本人のこの「家を持とう」という意欲には、
何ら異を唱えるつもりはありません。
多くの日本人にとって、それは生きるエネルギーの源です。

ただ、どういうワケか、近年の日本人は「家を持つ」ために
あまり賢明な選択をしてきたようには思われません。

かつて「米」本位主義であった江戸期では、
貨幣経済の発達と共に豊富な商業知識を有した悪徳商人が農村に入り込み、
朴訥な百姓から土地を巻き上げるという現象が蔓延しました。
現代では、悪徳商人たちと似たり寄ったりの不動産屋連中が、
業界知識に乏しい一般人にロクでもないマンションを売りつけるという
あまり愉快でない現象が見られます。

そういったイビツな業界風景を少しでも改善できればと思い書いたのが
「年収200万円からのマイホーム戦略」という著書。
発刊1カ月にして、早々と重版が決まりました。
正直、うれしいですね。
年収200万円の方はもちろん、500万円でも1000万円でも
賢く家をお買いになるためのノウハウがいっぱい詰まっています。
ぜひともお読みください。

参考レポート

買ってはいけない大規模マンション 首都圏編

買ってはいけない大規模マンション 神奈川編

買ってはいけない大規模マンション 近畿総集編

買ってはいけない大規模マンション 千葉・茨城編

買ってはいけないタワーマンション 東京都心編


2010/3/31 0:55 Comments (0)

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