「ハ会」活動をキャッチ、なお追跡すべし

最近、暑くてちょっとサボっていますが、
私も「動画ブログ」なんてのをやっています。
昔は「テレビ」というご大層なメディアでしかできなかったことが
今ではインターネットでほぼほぼ誰でもやってしまえるワケです。
これは、考えてみれば恐ろしいことです。
何か情報やコンテンツを持っていれば、
誰もが低コスト(時に無料)で世界に向かってそれを発信できるのです。
世の中の既存情報メディア(テレビ、新聞、雑誌)が軒並み経営不振に陥り、
そこに依存していた広告代理店(電通など)が
苦しい経営を迫られている実態が、
この情報化社会の劇的な変化を如実に表しています。

先日、某編集者がこんなことを教えてくれました。
「ある人がタワーマンションを禁止しようと呼びかけたら、
 6割が反対、3,4割が賛成した」
なんじゃそりゃ・・・と思って、そのサイトを覗いてみました。
ご紹介しましょう。

hakai.jp/

「ハ会」とか「ニッポン住宅維新会議」なんていう
カゲキな名前が付いています。
中身をみると、看板にたがわずかなりエキセントリック。
第2回のシンポジウムというのが先日あって、
その模様はネットで生中継されたようです。
今はその時の動画が誰でも見られるようになっています。

www.ustream.tv/recorded/8545563

最初に、さくら事務所の長嶋修氏が「新築住宅の総量規制」を提言。
次にリビタの内山博文氏が「タワーマンションの建設禁止」を・・・
どちらも過激でしょ?
ちょっと残念なのは、8人ほどのパネラーで討議するのですが
そこでの議論がうまく噛み合っていないこと。特に後半。
田原総一郎風のやや強引な司会進行は、テレビの影響?
各パネラーもあまり「討議」には慣れていないという感じでした。
また、参加者の中に一人もデベロッパーを代表する方がいなかったのも残念。
ただ、もしアノ場にいれば「袋叩き」にあったかもしれないので
怖くて参加できなかったのかもしれませんが。

それにしても、日本の住宅産業を「維新」しようとしている「専門家」が
こんなにたくさんいらっしゃって、熱く討議している姿を見ていると
何だかとても勇気がわいてきますね。
それに、問題意識のベクトルはみなさんさほど違っていないと感じました。
例えば「タワーマンションの建設禁止」についても、
タワー自体に大きな問題があることについては、
参加者の中の共通認識のように思えました。
それを抑制する方法論として「法律で禁止」するか否かになったので
議論の行方が迷走したのだと思います。
いきなり「禁止」云々の議論をせずに、
その手前の「タワーの何が問題なのか」をテーマにした方が
一般のエンドユーザーには分かりやすかったのではないでしょうか?
もちろん、専門家諸氏には物足りないかもしれませんが。

一方、長嶋修氏は「新築住宅の総量規制」を提言。
しかし、現実には「規制」できないので
「誘導」するしかないとも発言なさっていました。
それはその通りだと思います。
私としては、何につけても「お上」の力でどうしよう、
こうしようというのは反対です。
役人や政治家というものは、注意深く監視しておかないとすぐにズルをします。
例えば、最近の宇部三菱セメント問題も、国交省は業者側に立って
ひたすら問題の沈静化を目指しているとしか思えません。
「大臣認定」基準には達しなくても「JIS規格」にあっていたので問題ない、
というのなら、最初から「大臣認定」なんて不要なはずです。
いってみれば、ご都合主義。透かしてみれば、かなりインチキ臭い理屈。
ことほどさように、お上などというのはアテになるものではありません。
それに、連中の権限を増やすと、
逆にズルをしないように見張っておくという負担も増えます。

新築住宅もタワーマンションも、消費者が「くだらないものは買わない」という
賢明な判断ができるようになれば、自然に淘汰されていくと思います。
そのために「専門家」諸氏は、
さまざまな機会に「くだらない」住宅とは何なのかについて
自分の専門性に立脚した見解をエンドユーザーに対して
表明していくべきでしょう。
しかし、この「情報発信」というのは、かなりしちめんどくさいこと。
だからこそ、この「ハ会」のような活動に意義があると思います。

最後にちょっとだけ私の意見。
議論の最後の方で
「タワーマンションに限らず、マンション一般の話にしよう」
などという乱暴な展開になっていました。
アレは「大規模マンション」と「タワーマンション」の違いを
最初に分かりやすく定義しなかったのが混乱の原因でしょうね。
私は「大規模マンションタワーマンション」だと思っています。
ほとんどのタワーマンションは、それ自体が大規模コミュニティです。
ですから、「タワー」は「大規模」の問題点を全て含んだ上で、
さらに独自の様々なリスクを背負っているのです。
それだけ危険で不安定なモノなのに、どんどん作られ、売られています。
いわば無責任な「アワ踊り状態」。
「作る阿呆に買う阿呆、同じ阿呆なら儲けにゃ損損」
ということで、デベロッパーの儲けの道具になっています。
ただの「阿呆踊り」で済めば罪はないのですが、
タワーマンションは時に人の命を縮める危険性を孕んだ居住形態です。

この問題・・・日本社会の未来にかなり深刻な問題を
残すのではないかと予想します。
だからといって、法的に禁ずることには反対します。
最後は、自己責任の問題だと思いますから。

参考レポート

買ってはいけないタワーマンション 東京都心編

迷走する「麻布十番」三井vs.住友 タワーマンション対決

どう読むか? 住友・大崎 Vs. 三井・五反田 タワーマンション対決

徹底分析 豊洲タワーマンション市場

有明のタワー3物件を 明解に分析!

嵐の前の静寂?「晴海」「勝どき」「月島」のマンション市場を分析

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2010/8/2 18:30 Comments (1)

1件のコメント

「新築住宅の総量規制」について、麗澤大学経済学部の清水千弘氏は「住宅のだぶつき問題は,日本の政治家や官僚が予想している以上に深刻な問題.東ドイツの状況など真剣に研究をしないといけない.欧州で起こっている以上の問題に必ず発展する」とツイートされてます。
 
 欧州で起こっている問題とは……例えばスペインでは崖っぷちの状況みたいですね。日本では報道されておらず、記事が検索できないようで、英文ならこちらとか。
bit.ly/bM3rrp

 長嶋修氏は耐震偽装の問題を事件として表面化する以前から指摘・警鐘を鳴らしておられた方です。
 住宅のだぶつき問題に関しても早晩、何かが起こるかも。
 

 

2010/08/03 02:51 | by 面代真樹

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