これからの不動産投資はどうなる?

今日は、マンション購入のノウハウとはかなり近しい関係にある
「不動産投資」について書かせていただきましょう。
何度もここで書いているように、私は月刊誌「日経マネー」に
「失敗しない不動産投資術」という連載を行っています。

この連載・・・残念ながら来月発売号をもって終了します。
読者の反応は各種連載記事の中でも上位にあるそうなのですが、
誌面のリフレッシュという編集方針なので、仕方ありません。

まあ、それはよいとして・・・・・
今の日本の経済状況で、不動産投資で成功するのは
「かなり難しい」といわざるを得ません。
生半可な知識でおやりになると、ほぼ失敗します。
なぜなら不動産価格も、その賃貸料の水準も、
今後はなだらかな右肩下がりになるのが確実だからです。

こんな時代に「不動産投資に最適」な物件を見つけ出すことは至難の技。
万難を排して購入できたとして、それを管理・運用するのも大変。
アウトソーシングという手もありますが、コストはバカになりません。
それに、どれだけ優良な物件を購入できたとしても
中長期的にはその資産価値は確実に目減りするのです。

それでも、不動産投資に意欲を燃やす個人投資家はたくさんいらっしゃいます。
なぜでしょう?

それは、まだまだ不動産投資がバラ色に見えるからです。
身近なところに「不動産投資の成功者」がゴロゴロいるからです。
ホラ、あなたの周りにもいるでしょ、
家賃収入だけで食べている「大家さん」。
何にも働かなくても、悠々自適。
ラクそうに生きていますよね。

いってみれば、この「大家稼業」というものは
私たち普通の市民にとって最も身近で、
手が届きそうな「ジャパニーズドリーム」なのです。
ちょっと前までは、さほど難しいことではありませんでした。
たとえお金がなくても、きちんとした定期収入のある方だったら
銀行が購入資金を融資してくれました。
当初の計画通りだと・・・借金も10年ほどで完済でき、
その後は本物の「大家さん」。
うまくいけば、ちょっとした資産家です。

要は、物件の選択さえ誤らなければよかったのです。
そして、「いい物件」はよーく探せば見つかりました。
それは、今も同じ。
不動産投資に適した「いい物件」は、探せばあるものです。
その探し方や、運用の仕方のちょっとしたノウハウを
ご大層に「学校」と称して教えているところもあります。
授業料は35万円ほどだそうです。

確かに、不動産の資産価値を見る眼やその運用ノウハウを
体系的に教えてくれる機関も、書物もありませんでした。
巷に出回っている「私は・・・で不動産投資に成功!」
などというノウハウ本は、かなり偏ったものや表面的な知識を
サラっと流しているものがほとんどといっていいでしょう。
何を隠そう、私も「日経マネー」の誌面で、
自分なりの「ノウハウ」の一部を紹介してきました。

そういうのに比べれば、35万円の「学校」の「教科体系」は中々のもの。
でも、不動産屋的な観点で眺めれば、普通のことです。
そこに大枚の費用をつぎ込んで勉強なさるかどうかは、
個人の価値観に属することなので、どうこういいません。

今日は、そういうことに云々するよりも、
不動産投資なる「投資」形態そのものがかなり危機に瀕している、
ということをお伝えしたいと思って、この文章を書いています。

確かに10年位前までは、不動産の資産価値自体が大きく下落する、
という事態は想像しにくかったと思います。
例えば、8000万円で買った木造アパートが、
10年たったら老朽化することは誰にも分かります。
でも、その底地の資産価値は「安定」しているというのが、
かつての不動産投資の「前提」だったのです。

今や、その「前提」がガラガラと崩れだしそうな気配です。
アパートが建っている底地よりも、
小まめにメンテナンスしていれば建物の方が安定しているかもしれません。
8000万円のアパートが6000万円になるか、
4000万円に落ちるのかは、建物の「質」と「メンテナンス」次第、
という時代になっているような気がします。

もちろん、ロケーションによって条件は大いに異なります。
東京の港区白金あたりのアパートなら、
底地の資産価値は10年たってもそう変わらないかもしれません。
でも、小田急線の「柿生」駅徒歩10分くらのいのアパートだと、
底地の資産価値は10年後に4割ほど目減りしているかもしれません。
千葉県の「東船橋」徒歩10分のアパートだったら、
10年後には半分以下の資産価値しかないと推測します。
あとは建物の「状態」次第です。

どちらにせよ、これから不動産投資を始めようとする方にとっては、
とっても困った市場環境になってきました。
じゃあ、不動産投資自体に未来はないのでしょうか?

私は、一概にそうとはいえないと思います。
人口減少、経済衰退、産業流出・・・という不動産需要の三重苦の時代でも、
首都圏の中心部におけるニーズはさほど衰えません。
さきほど例に挙げた港区白金だったら、
多少は家賃が下がるでしょうが、借りたい人は10年後でもいるはずです。

また、多くの大家さんが嫌気をさして資産を売りに出すでしょうから、
不動産価格は下落し、逆に投資利回りは向上するはずです。
つまり、上手に「投売り」を拾えば、旨みは味わえるのです。
もちろん、以前よりも難易度は増しています。

でも・・・こういったマクロの視点やアクロバットのような購入手法を、
例の「学校」では教えているのでしょうか。
受講された方は、私にも「教えて」ください(笑)。

さて、そういう難易度の高いことをやらなくても、
割りあい優良な不動産に「投資」する方法はあります。
それは、以前から書いているように「Jリート」というもの。
これを闇雲に信じて投資していいとは絶対にいいません。
ただ、下手にワンルームマンションやボロアパートを買うよりも、
はるかにお手軽であり、利回りもそう悪くありません。
運用のテマヒマは限りなくゼロです。
ただし、ご他聞に漏れず、よく見張っておかないと
運用企業が時々ズルをする例があります。
親会社からダメ物件を押し付けられたり、
無理なファイナンスを行って資産価値を落としたりしている銘柄もあります。
ただ、ここ数年で合併などを繰り返し、かなり淘汰されました。
また、広範囲な情報開示義務があるので
投資家に対するあからさまな背信行為はできない仕組みです。
まあ、それでもいろいろ問題点はありますが。

でも、総合的に見れば「生兵法」でワンルームマンションを
買うよりも「賢明」な不動産投資ではないかと思います。
そのあたり、私の考えを「日経マネー」の
9月号、10月号、11月号(現在販売中)で書いてきました。
このシリーズの完結編は12月号(10月20日頃発売)で
掲載される予定です。
ご興味ある方は、ぜひご一読ください。

また、この続きを掲載したいという雑誌編集者はぜひご連絡ください。
こちらから。


2010/9/29 23:06 Comments (0)

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