サルから進化した、悩み多き「ヒト」

半世紀近く生きてきて、なんとなく分かったことは
「どうやら自分はストレスに強い」というか、
ストレスをあまり感じないタイプ(鈍感?)なのか、
幸運にもストレスの少ない人生を歩んできたのか、
ともかく、成人してからは強度のストレスに
悩んだ経験が少ないようです。

もう四半世紀近くも「上司がいない」という社会環境もあると思います。
その代わり、面倒くさい客がいるはずなのですが、
これも「嫌な奴とは付き合わん」というのが基本方針。
「仕事を下さい」なんて、心底から客に頭を下げた覚えもなし。
いってみれば、ずっと「武士の商法」のつもりです。
そんな私を「あいつは商売上手」なんていう輩もいるけれど(笑)。

あとは、やっぱり強度なナルシストなのが幸いしていると思います。
すごくおバカな奴が現れて、私に災いをもたらしても、
「世間の9割はアホや。そう思たらハラはたたん」
といっていた父親の言葉どおりに「寛容と忍耐」のスタンスで構えます。
(まあ、アホはアホなりに一生懸命生きとんのや、しゃーない)
(ワシのように生まれながらにカシコイ人間には、インテリジェントオーレッジちゅうもんがあるさかい、アホは許したらなアカン)
これを言葉にして相手に伝えたら、激怒されるでしょうね(笑)。
でも、自分の心の動揺を抑えるための呪文みたいなものです。

そういう心の「逃げ」をもって生きてきたせいなのか、
メンタル面での危機はほぼありませんでした。
これからはどうか分かりませんが。
ところが、最近「うつ」に興味をもっています。
それは、ちょっとしたキッカケ。

最近は自分が取材されことが多いのですが、
実は「される」よりも「する」方が大好きです。
取材されるのは知識のアウトプットで、するのはインプット。
インテリジェンスの損得でいうと、インプットが得でしょ?
なんてケチな理由もあるのですが、アウトプットの場合は
ちょっと調子に乗るとすぐに「行き過ぎ」てしまいます。
カンタンに言えば、身の丈以上の「エラそー」なことを喋ってしまうのです。
だから、いつも謙譲の心を忘れずに臨まねばなりません。
ナルシストの私には結構辛い(笑)。
喋りすぎて地金が出たな、と思うと後で自己嫌悪に陥ります。
その点、取材する側に回るとラクです。
相手が気持ちよく喋れるような空気を作っておけばいいので、
自分が「行き過ぎて喋る」ということにはなりにくいのです。
特に、面白い話を聞かせてくれる相手だと、ズンズン突っ込んでいけます。
後で後悔することもほとんどありません。
悔やむとすれば「アレも聞いておけばよかった」というようなこと。

数ヶ月前、ダイヤモンドオンラインというネット媒体からの取材を受けました。
やってきた女性ライターさんは、実に聡明で感じのよい方。
一通りの取材が終わった後、お互いの「ライター話」に。
そこで、彼女が最近著書を出したと言う話がでました。
聞いてみると、テーマは「うつ」。
私にとっては、これまでノーマークの分野だけに興味津々。
でも、何にも知らないので「逆取材」も出来ません。
取材と言うのは、事前調査が不可欠なのです。

その時の「うつ」話は不完全燃焼に終わったのですが、
先日「雅子様と『新型うつ』」(香山リカ著)という本を読みました。

実は題名に釣られて買ったら、著者がご活躍中の女性精神科医。
勝間和代さんとの「すれ違い論争」でも話題だっただけに、
それなりに興味深く読ませていただきました。
そこで私は初めて「うつ」なるものを少し認識。

さらに、件の女性ライターさんから最近、別の取材依頼がありました。
「これはチャンス!」と彼女の著書を取り寄せて一読。
いらっしゃったら、今度こそ「うつ」について逆取材をしようと
虎視眈々と待ち構えていたのです。
残念なことに体調を壊されたとかで、取材は無期延期。
でも、彼女が書いた本は面白かった。
その名も「ワーキングうつ」(西川敦子著)

考えてみれば、私の身近にもそういう方が何人もいました。
「うつ」に対して鈍感な私は、全然気にかけていなかっただけ。
改めて、自分の不明を恥じました。
私は「うつ」を、単なる「負け組病」と思っていたのです。

自分自身、小学生の時に日教組の教師から「精神病だ」という
レッテルを張られた経験以後、心の病についてはそれなりに
知識を蓄えて来たつもりではありました。
でも最近、「前時代の知識」はほとんど役に立たなくなっています。
科学も医学も日進月歩。
精神分裂症は、いつの間にか統合失調症に呼び名も変わっていました。

そして「うつ」は今や日本の国民病ではなかろうかと思えます。
西川さんの「ワーキングうつ」を読んでいると、
「こんなことは、あるよなー」という事例がたくさん出てきます。
そして、世の中には私のようにノーテンキなナルシストではない
ごくごく真面目な人々がたくさんいらっしゃるのです。
そういった方が、「うつ」になっていく・・・

ストレスというのは、ほとんど人間関係が原因ではないでしょうか?
つまりは、人間が「社会的な動物」であり「社会」の中で
自分の居場所を見つけ、生きる糧を得ることでのみ
生存して生殖していくしかない生き物だからこそ、生ずる心理的葛藤です。

人間と比べて、極めて単純な社会を構成するサルの世界では
「うつ」はあるのでしょうか?
多分、ないでしょうね。
彼らの行動基準は、至極単純です。
オスの場合だと、メスと交尾できるか否か。
そのことによって、社会構成の基礎が出来ています。
これは、最近ハマった「サル学の現在」(立花隆著)で読み取れます。
この本、書かれたのはほぼ20年前。

もう、科学的な知見は古くなっているでしょう。
ぜひ、本当の「現在」を伝える続編を出して欲しいですね。

文明と文化を得て、高度な社会を形成したからこそ
ヒトは強度なストレスに悩まねばなりません。
1日に2時間程度しか「餌取り」をしないゴリラは
実にノーテンキで怠惰なようです。
果たして、私たちはヒトになって幸せだったのか?

「競争社会」というのは「野生動物の世界と同じ」なのか?
ストレスに押しつぶされて「うつ」になる人は、
道徳的にはかなりマトモな生き方をしている場合が多いように思えます。
様々なことを考えつつも、やはり人間は自らが
サルの延長線上にあることを忘れてはならないと思います。
欠けゆく月を眺めながら・・・


2011/9/17 1:57 Comments (0)

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