タワーマンションは災害をどこまで「想定」しているか?

どうも悪質なウイルスに侵入されたようで、
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ブラウザによっても、かなり違うようです。
IE(Internet Explorer)ではなくFire Foxchromeのご使用をお勧めします。
そちらの方が正常に表示されているようです。

さて、今日はまず拙稿の掲載された雑誌をご紹介します。
ZAITEN 2012年2月号 630円
ただ今、書店で発売中です。


私の原稿のタイトルとリード部分は

購入前にご一読「高級マンション閻魔帳」
三菱地所レジデンス『ザ・パークハウス晴海』湾岸人気復活の虚構
「安全・安心」を前面に出し、このところ湾岸タワーマンションの人気復活が報じられている。その先駆となる『ザ・パークハウス晴海』は、プロゴルファー石川遼をイメージキャラクターに盛んに購入を煽る。はたしてこのマンションは〝買い〟なのか。

2012年の首都圏マンション市場の開幕ファンファーレは
間違いなくこの『ザ・パークハウス晴海』でしょうね。
その後、横浜の「磯子プリンス跡地」が続き、
千葉の「プラウドシティ新船橋(仮)」へとつながっていくはずです。
またまた「大規模物件」が目立ち始めました。

でもまあ、今の注目はやはり『ザ・パークハウス晴海』。
価格は未定ですが、12月8日のニュースリリースによると
「40平方メートル台が2000万円台~、60平方メートル台が4000万円台~、70平方メートル台が5000万円台~」
これは最低価格ですから、実際は平均が坪250万円程度・・・
ではないかと私は予想しています。
そして、250万円だった場合、その価格が妥当なのかどうか、
詳しくはZAITENの記事をお読みください。
また、私のレポートには、もっと突っ込んだ分析を書いています。

参考レポート
晴海タワーズ登場!「晴海・勝どき・月島」
乱戦模様のマンション市場【2011年11月改訂版】

価格:4390円(税込)

さて、年末です。
今年は実にいろいろなことがありました。
今年こそマンション市場が本格的に復活するのではないか、
と期待されたのですが、その出ばなをくじいたのが東日本大震災。
そのあと1,2か月は、それこそテンヤワンヤ。

被災された方の非情な現実が次々と報道される中、
菅政権のおバカな対応ぶりに怒り、呆れ果てる日々。
スーパーの棚からモノがきれいに亡くなった時にはビックリ。
子どもの頃の第一次石油ショックを思い出しました。
ガソリンが入れられなくなったのにも驚きました。

あの時、何とも不思議に思ったことは・・・
日本の自動車がすべて満タンにしようと思っただけで
ガソリンスタンドは即座に空っぽになるのだ、ということ。
また、各家庭が1パックだけ余計に買うと
スーパーやドラッグストアの店頭から
トイレットペーパーが消えてしまうという現実。
この国の消費社会と言うものが、
実に脆弱な構造の上に成り立っているのを思い知らされました。
これらのことは、ずべて「想定外」だったというべきでしょう。

マンション業界に話を戻しましょう。
あの地震によって世の中のマンション選びの基準が
大きく変わったのではないかと言われています。

●湾岸離れ(津波・液状化への恐怖)
●タワー離れ(揺れ、停電への恐怖)

首都圏は、三陸ほど大きな津波は来ないと考えられています。
しかし、油断はできません。
鎌倉では、大仏様のあたりまで津波が押し寄せた記録があります。
有明、新浦安、稲毛海岸、海浜幕張、みなとみらい等の
新興の埋立地では、まだ一度もまともな津波を経験していません。

10年ほど前、江戸時代から何代も続く
木場の釣舟屋さんを取材したことがあります。
確か、食糧倉庫の跡地にできた大型マンションの広告制作の仕事でした。
そこの60歳くらいの当主がおっしゃっていました。
「あの食糧倉庫ができた時(昭和初期)、うちの爺さんが喜んだそうさ。『これでウチには津波が来なくなるってさ』。うちは江戸時代から3回津波に遭ったと聞いているよ。俺はまだ一度も知らんけどね」
東京湾だって、家が流される規模の津波がやってくるのです。
当然、そういったことは「想定」しておくべきでしょう。


中央のクレーンが立っているのが現地です

先日、改めて『ザ・パークハウス晴海』の現地に行ってまいりました。
あの地形だと、津波は易々と襲い掛かれそうです。
10メートルの津波なら、マンションの2階くらいまでは洗われそうですね。
どこかの間抜けな原発の様に、自家発電機を地べたに備えておくと
津波をかぶって使えなくなりそうですね。
また、津波の海水が引いた後でも、
瓦礫だらけの敷地内に簡易トイレが設置できるのでしょうか?

はたまた、非常用倉庫には何リットルの水が備蓄されているのでしょう?
一人の人間が生きるためには、一日に2リットルが必要だそうです。
もちろん、身体を洗ったりトイレを流す水は除きます。
2,000人の住民が暮らしているとして、一日4トンです。
どれくらいかと言うと、だいたい下の写真くらいです。

まあ、あのマンション内で備蓄するなら10トンがせいぜいですね。
つまりは2日半分。その後はどうするのでしょう?
もっといえば、配分は誰がどうやって行うのですか?
その時、管理組合の理事会は機能しているのでしょうか?
配分のルールは決まっているのでしょうか?
電話をしても、管理会社が人を寄越してくれたりしませんよ。
各階であらかじめ「非常用物資配分委員会」でも作るのでしょうか?
それくらいのことは、当然「想定」しておくべきですね。

この一年、日本人は様々な「想定外」に遭遇しました。
それで、「想定外」はこれで終わりかと言うと、そんなワケありません。
もし、首都圏にああいう強力な地震がやってきたら
それこそ「想定外」だらけになってしまいます。

では、待っていれば誰かが助けに来てくれるのか?
来てくれます。必ず来てくれます。
でも、間に合うかどうかは別の問題です。
誰かが救援に来てくれるまでは、
自分たちで何とかしなければならないのです。
水も食料もトイレも、そして医療・衛生面も。

この国ではまだ、タワーマンションが被災した経験がほとんどありません。
電気や水が何日も使えなくなったタワーマンションというものが、
いかに暮らしにくく、始末に負えないものかと言うものを、
誰も本気で「想定」していないのです。
これは、売る側も買う側も共通の認識ではないでしょうか。
そういう「不都合な真実」からはひたすら目を逸らせて、
「免震工法」や「非常用電源」、「非常用備蓄倉庫」があるから
「安全で安心」なのだと思い込もうとしているのです。

「想定」というのは、ちょっと想像力を働かせるのと同じ。
東京湾に30メートルの津波が襲ってくることを想像する必要はありません。
でも10メートルくらいなら、過去にもあったようですから
十分に想像も「想定」もできるはずです。
そして、原発が満足に稼働していない昨今では、
電力の供給は、ちょっとした災害でもすぐに止まりそうです。
何といっても供給余力がギリギリなのですから。

湾岸のタワーマンション・・・・
売る側は敢えてそういう余計なことを想定したくないでしょうが、
買う側は十分に想像をめぐらし、様々に想定すべきでしょう。
5年後、もし大きな災害に襲われて恐ろし目にあったとしても、
その時に元の売主には何の責任も問えないのが、今の日本なのです。


2011/12/29 21:21 Comments (0)

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