なんと、イギリスには建物の減価償却がない!

一昨日は渋谷の米家さんで飲み会。6名の方が来てくださいました。
このブログの読者さんとああいう会をもったのは初めて。
個人的に親しくなった方と酒席を共にしたことはありましたが・・・
いやあ・・・面白かった。楽しかった。
あっという間に4時間半。
いっぱい飲みましたが、不思議とあまり酔いませんでした。

中でも傑作の会話。
私がみなさんに向かって「磯野家の・・・を読んでくださった方は?」
上がった手は1本だけ。
その方は前回のセミナー参加者。
「磯野家の・・」は参加者全員に配布しました(笑)。
お一人の方が
「ああ、ぼくは今図書館で予約しているぼですが『10人待ち』の人気で、中々回ってこないですよね」
一同、大爆笑。
私も苦笑するしかありません。
もちろん本音は、「図書館で10人も待つくらいなら、本屋で買ってください」。
それにしても、愉快な会でした。
みなさんとても知的レベルが高かったですね。
また機会があれば開催したいと思います。

さて、今日の話題はちょっとカタめで「マンションの減価償却」。
おっと・・・そんなむつかしくないので読んでくださいな。

先日、イギリスの不動産投資を扱う企業を取材しました。
いろいろ面白い話を聞きましたが、もっともびっくりしたのがコレ。
「イギリスにはね、建物の減価償却という発想がないんですよ」
ヒエー、と思いましたね。さすが大英帝国!

「減価償却って何?」という方も多いでしょうから、
いつもの通りにチョー簡単に説明しますね。
これは、税務署が経費を認めてくれる割合みたいなもの。
例えば、ある人が自分の土地に賃貸用にマンションを建てたとします。
建築費用は、仮に4億5千万円かかったとしましょう。
当然、ゼネコンには建物を引き渡すまでに全額を払います。
すると、その人の不動産事業はその年に
4億7千万円の経費がかかったことになります。
その建物の賃貸収入が2000万円くらいあっても、
その年は大赤字になりますよね。
税金は儲かった場合に払う、というのが原則。
無収入の主婦や赤字の会社は税金を払いません。
でも、その人は多分その年も税金を払わなければいけないのです。
なぜか?

それは、税務署が4億7千万円を一度に経費として認めてくれないから。
まず、鉄筋コンクリートのマンションはすぐに壊れません。
だから4億7千万円は失われたものではなく、形を変えたに過ぎません。
失われることが前提の「経費」ではなく、「資産」と考えるのです。
まあ、ちょっと納得できませんが、それが税務署の理屈。
しかし、マンションはゆっくりと傷んでいきます。
そのゆっくりと傷んでいく(減価)分を経費で認めてくれます。
因みに、鉄筋コンクリートのマンションは47年が減価償却期間。
この場合はざっくり毎年1000万円弱が経費となります。
つまりは、47年間かかってやっと最初に払った4億7千万円が
ほぼほぼ経費にできるというワケ。
実は、パソコンなども同じ。だいたい4年です。
40万円でパソコンを買ったら、毎年10万円が経費になります。
ところが、10万円以内のパソコンだと消耗品扱いで、
その年に全額を経費にできるのです。

これが減価償却というもの。
ところが、イギリスには「建物の減価償却」という発想がない!
つまり、イギリスの税務署の考え方として建物は何年たっても
減価しない(価値が減らない)という前提に立っているのです。
道理で、あの国には築200年なんていう住宅はザラにあります。
だいたい、木造の家屋でも3代は継承すると言われているのです。
だから、不動産取引に占める中古の割合は77%。日本は30%。

逆に、日本の税務署は鉄筋コンクリートのマンションでも
「47年経ったら価値がなくなる」と考えているのです。
木造住宅だったら、これが20年です。
よく「木造の戸建ては20年で評価額がゼロになる」と言われる根拠がコレ。
まあ、昔の安普請住宅は20年でボロボロになっていましたね。
でも、私の京都の実家など30年前に亡父が新築しましたが
未だに賃借人が快適に住んでいますよ。

だから、税務署の減価償却の基準は実態と合わなくなっています。
でも、別にこれを改める必要はないと思います。
イギリスみたいになったら税金が高くなるだけですから。
それよりも、改めるべきはこういった古い基準に合わせて、
不動産屋さんたちが建物価値を決めていること。
木造住宅なら単純に「20年でゼロ」というのは硬直しすぎています。
マンションでも40年前に長谷川工務店が造った物件には
酷いものが多いですが、鹿島や竹中が建てたものの多くは
キッチリと今でも凛々しく立っています

要は、不動産屋さんたちは建物をキチンと評価できる
「眼」をもたないから、税務署の基準を援用しているだけ。
不動産を扱うスペシャリストなら、
そのあたりの専門性をもっと身に着けるべきでしょう。
それができないのなら、専門家へ依頼すべきです。
そのあたり、まだまだ意識が低いのがあの業界です。


2012/8/28 19:24 Comments (0)

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