30年後に成長している不動産企業はどこ?

先日、某大手新聞社の記者さんと四方山話をしている時に出た話題。
「御社なんて、これから東大卒が主流になるのではないですか?」
と、私が尋ねたら
「いや、最近はウチのような会社は人気がないのですよ」
あれ? 確か上位20番くらいに新聞社はいくつも入っていたはず・・・
それで、気になって調べてみました。

東洋経済オンラインの「上位100ランキング」によると、
新聞社はやっと94位の読売新聞のみ。ビックリしましたね。
私が就職活動をしていた頃は、必ず10位以内に朝日か読売は
入っていたように記憶をしています。それが今や・・・

就職人気ランキングというのは、その時々の世相や
産業の趨勢を見るのにかなり参考になると思います。
新聞社は今後ネット媒体化への変換を成功させなければ
かなり苦しい展開を迫られると、世間は見ているのでしょう。

私は、いくらネット化が進んでも、今のような紙の新聞が
なくなるということは絶対にないと思います。
ただし、10年後の新聞の総発行部数が、
今の半分を維持しているとはとても思えませんが。
どうやら新聞というのは「斜陽産業」になってしまったようです。

また、就職の人気ランキングに顔を出さなくなるということは、
それだけ応募者が少ないわけですから、
優秀な人材を採用できる可能性が狭まるはずです。
それこそ、記事の質を維持するために深刻な危機でしょうね。

で・・・振り返って、不動産業界はどうなのでしょう?
100位以内に入っているのは、かろうじて95位の三菱地所のみ。
マンションデベロッパー専業は1社も入っていません。
かろうじてマンション専業ではない、ハウスメーカー系の
積水ハウスが55位、大和ハウス工業が79位に顔を出すくらいでしょうか。
もちろん、この2社に票を投じた学生は、マンションデベではなく
テレビコマーシャルをしているハウスメーカーに入りたいのでしょう。
「マンション開発分譲」という業種が、今後ますます細っていくことを
学生たちが知っているというよりも、
単なる「不人気」という事の方が大きいとは思います。
ああ、やんぬるかな・・の世界ですね。

例えば、昨年のマンション供給トップは野村不動産。
親会社のホールディングスも含めて、100位以内に姿無し。
社内は常にギスギスしているそうですが、
待遇は抜群にいいというのがもっぱらの噂。
そんな会社でも、学生たちの視線は熱くないようです。

広告業界も、従来型の媒体を主力としている代理店は
もはや「斜陽産業」化しているのかもしれません。
電通や博報堂はランキングに顔を出していますが、
それ以外の企業は1社も見つけられませんでした。

さて、アベノミックスの「3本の矢」の3番目は「成長戦略」。
日本経済が自力で成長軌道をたどれるように・・・
と言うことのようですが、中身は今ひとつ明確ではありません。
多分に「イメージ」だけだと思います。

今の日本社会は「足りないものがない」状態になっています。
むしろ「余っている」というモノがたくさんあります。
代表的なのが、私の専門である住宅。
例えば、住宅産業が今後成長軌道に乗るかと言うと、
それはまず「あり得ない」話です。
なぜそうなのかは「磯野家のマイホーム戦略」に書きました。

経済が成長するパターンには、2種類あると思っています。
まず「足りないものを補うため」様々な財を生産し、市場に供給する。
それを需要できる人々がいれば、
財を増産することで自然に経済は成長するはずです。
かつての日本や、今の支那、インド、ブラジルなどがその状態。

もうひとつは、新しい産業の誕生によってそれまでになかった
需要が生み出され、それが経済を拡大させるパターン。
大きくは、産業革命による工業製品の大量生産が可能になった事。
あれはマクロ経済を爆発的に成長させました。
最近の小さい事例では、携帯電話やインターネットの普及。
もっとも、これには多少の反作用がありました。
固定電話の需要が細ったり、新聞やテレビの役割が低下する、
さらに幅広い商品の店舗販売量が減る、などです。

アベノミックスが3本目の矢としてめざす成長戦略とは
どう考えても後者のほうでしかないと思います。
つまり、新しい産業や需要を誕生させることでの成長。
しかしそれは政治家や官僚がどうにかできるものではありません。
むしろ、政治家や官僚は新しい産業の誕生と成長を
様々な規制を設け、それを取り払わないことで妨害する場合がほとんど。
そう考えれば、アベノミックスは2本目の矢までしか有効ではありません。
3本目の矢は、ほぼ絵空事と言うことになりますね。

学生たちは、自分の将来を託するに当たって、
かなり保守的な選択をしています。
上位10社のうち、いわゆる「規制産業」でないのは8位の集英社くらい。
半分の5社が金融。3社が旅行・運輸。1社が食品(薬品)。
どうして集英社が上位に入ったのかちょっと謎ですが、
その他はよく分かります。
「今後30年以上、潰れそうに無い」という視点なのでしょう。
でも、実際のところどうなのでしょう?
例えば、私が就職活動をしていた頃、人気のあったNECは・・・
円安で少しは持ち直すかもしれませんが、「倒産の危機」にあるそうです。

今の日本、大きな会社はほとんどが「斜陽産業」だといっていいでしょう。
金融にしたところで、私が就職活動をしていた頃と
「同じ名前で出ています」どころか、会社自体がなくなったり
どこかと合併してしまったところがほとんど。
30年後、日本には「家電」産業なんて消滅しているかもしれません。
つまり30年以上も「安定」している企業など、ほぼないはず。
そういった意味で不動産系の企業だって捨てたものではありません。
日本に1億人ほどの人間がいる限り「なくならない産業」なのです。

かといって野村不動産に入社することなど、私は絶対にお勧めしません。
三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスも同様。
「住宅開発」というのは、ほぼ確実に斜陽産業となります。
ただ、95位にランキングされた親会社の三菱地所や圏外の三井不動産は、
30年後でも確実に存在しているし、倒産などほぼあり得ないでしょう。
いくら人口が減って高齢化しても、丸の内と大手町と日本橋は、
ほぼ今と同じ役割を果たしているでしょうから。

ただし、その子会社のレジデンシャルやレジデンスは、
30年後にもまだ存在しているどうか、はなはだ疑問ですね。
ましてや40年後なら、ほぼ確実に原型は留めていないと予想します。

では、不動産業界ならどこが生き残っているのでしょう?
三菱地所や三井不動産は確実。でも入社の難易度はそれなり。
人気が高くない割には、早慶以上の学校でないと入りにくいはずです。
ランキング中位の大和ハウス工業は、大量採用と大量離職の企業。
入りやすいけど、人材活用がかなり荒っぽいのでお勧めしません。
積水ハウスはハウスメーカーとしては抜群ですが、
マンションデベとしてはチグハグさが目立ちます。

私は、これからの時代の成長性では旭化成が注目できると思います。
なぜなら、ここは「建て替え」に強いからです。
これからの時代、新しく住まいを開発するよりも、
老朽化した住まいをどう再建するのか、
という「建て替え」に対する需要が急速に増大するはずです。
その分野で、旭化成は地味ながらノウハウを積み上げています。
そういったノウハウは、企業ではなく人に備わり、積み上げられるもの。
もし、不動産業界に入るのなら、そういうスキルを備えることで
これからの時代を力強く生き残れるような気がするのです。
そういった意味で、私は中長期の視点でこの企業に注目しています。

 


2013/3/2 16:09 Comments (0)

コメントはまだありません

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.


Leave a comment

※こちらへ書き込みいただいたコメントは、承認後全て表示されます。
マンション購入に関する個別相談等こちらへ表示させたくない場合は、
専用フォームからお願いいたします。