東京の住宅価格が今後も上がりにくい理由

昨日だったでしょうか、公示地価が発表されましたね。
毎年同じようなことを書いているのですが、
あの制度はもう無くしてしまった方が良いと思います。
そもそも公共事業用地の取得算定の基準にすることが目的らしいですが、
そんなの路線価でも十分じゃないでしょうか。
またいちいち全国くまなく調査する必要があるのでしょうか?
公共事業用地になるところだけ鑑定を依頼すればいいだけでしょ。

毎年、この公示地価が発表されるニュースは
「下落幅が縮小」とか「下げ止まり」といった言葉で語られます。
ニュースの出し手が「そうあって欲しい」と願っているのです。
地価がズルズルと下がっているよりも「下げ止まり」、
しかも「反転上昇」に転じた方がいい、というポジショントークですね。

私も僅かながら不動産の所有者として、そうあって欲しいとは思います。
しかし、現実的に今後地価が反転上昇するのか、というと???
不動産といえども供給を上回る需要が無ければ、価格は上昇しません。
ところで現在、東証リート指数が急上昇中ですね。
リート銘柄の価格が上がれば、当然利回りは減じます。
そもそも、元が安すぎたワケですからこれくらいは上がって当然。
しかし、だからといって地価と直接リンクするか、というと???

東京都内の生産年齢人口は、ここ10年以上横ばいです。
つまり、不動産の需要者は増える気配がほとんどないのです。
むしろ現在の人口構成から考えれば、減ることは確実。
減った分を地方や外国からどの程度補えるか、という問題です。
これについて、私はさほど悲観していません。
地方では確実に「食えない」ワケですから、
東京への人口流入は途絶えないはずです。
地方はどんどんやせ衰え、東京への一極集中はますます進むでしょう。
その分、住宅が必要になります。
しかし・・・それでも住宅の価格を上昇させることはなさそうです。

その原因は、何度も言う様に供給過多。
今、首都圏で開発供給されている分譲マンションは、年間5万戸前後。
かつての半分ちょっとまで落ち込んでいます。
そして、その半分が東京都内で供給されているのです。
この勢いは、少なくとも数年間続くと予想できます。
各デベロッパーが事業縮小している、という話は聞きませんから。

新たに建設される「新設住宅着工数」という統計では
平成24年に東京都内で約14万戸の新設住宅が着工されたようです。
このうち、「建替え」もあると思うので、実質増が8割と考えても
1年で11万戸ほどの住宅が増えていることになります。
一方、東京都の世帯数は今でも年間10万ほど増えていますから、
だいたいは需要と供給があっていることになります。1万戸は余りますが。
そして、空家率は5年前の統計で約11%です。
今は、それよりもだいぶ増えていると予想されます。

マンションデベロッパーも含めた住宅産業の各企業が
営業努力を続けることで、この空家率はどんどん高まっています。
その結果、家賃なんかはどんどん安くなっています。
例えば「マンションPER」なんて指標があって、平たく言うと
「そのマンションは家賃何年分の値段か?」ということなのですが、
こういうのは「何を基にしているのか?」ということが大切。

例えば、マンションの価格というのは新築も中古も
実際は「いくらで売られているか」という正確な数字は
売買契約を結んだ当事者同士にしか分かりません。
また、「家賃はいくらで貸したか」、
というのも当事者と仲介業者しか分かりません。
それを誰かに公表する義務はないのです。
だから、おおよそのところは想像するしかありません。

「レインズを見れば相場が分かる」という向きもあるでしょうが、
取引数の少ないエリアでは「相場誘導」が可能です。
何といっても、取引事例の報告は申告制ですから。
しかも、レインズに乗らない取引なんてそれこそ日常茶飯事。
したがって、プロはレインズを100%は信用しないのです。

さて「マンションPER」という指標は、分母や分子が
ちょっと変わっただけで大きく見え方も変わってきます。
したがって、私は「ふーん、そうなの」程度にしか見ません。
まあ、そんなことはどうでもいい話なのですが、
要は肌身の感覚として「家賃がどんどん低下」しています。
特に郊外においてこの傾向が強まっていますね。
嫌ですね、この感覚。なんか背中がザラザラしてきます。

家賃が下がると、今後は「買うよりも借りた方が得」というエリアが
都心から郊外へ広がっていくような気がします。
こうした現象に歯止めをかけるためには、
住宅産業が供給を絞るしかないと思います。
マンションなら都内で年間1.5万戸程度でもよいのではないでしょうか?
今の6割程度です。
そうしないと、「値崩れ現象」に歯止めがかからなくなります。
でもまあ、無理でしょうね・・・あの業界は。
自分で自分の首を絞めていることに気づかない。
気づいていても止められない。
いつものことですが。

榊マンション市場研究所・春の不動産セミナー
「アベノミックス後のマンション購入は?」

日時:2013年4月20日(土) 午後1時15分より(午後1時開場)

場  所:ルーテル市谷センター 第1・第2会議室


2013/3/22 18:00 Comments (0)

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