マンション管理士をもっと活用すべき

今日は、あるマンション管理士さんとお話ししました。
「東京で、マンション管理士として食えている人って、何人くらいですか?」
「そうですね、多分、10人もいないのではないでしょうか」
うーん、それは中々キビシイ!

「100戸以上のマンションで、マンション管理士が入っている割合は」
「多分、1割もないでしょう」
つまり、今後開拓できる市場は膨大。
それも、日々膨張しているワケです。

ただ、マンション管理士というのは名称独占資格であって、
医師や弁護士のように業務を独占できるわけではありません。
例えば、マンション管理士の資格がない私が、どこかの
マンション管理組合の顧問やアドバイザーになってもOK。
現に、それらしいこともやっています。

先日、「リゾートマンションの滞納管理費回収セミナー」という
非常にニッチなテーマのセミナーを開催しました。
募集は、このブログ上だけ。それでも6名の参加(1名ドタキャン)。
その内の約半分が不動産やその周辺の業界人(笑)。
いやはや、ビックリしました。

ただ、これからマンションに関する世間の関心は
「どのマンションを買うべきか?」ということから
「いつ売るべきか」あるいは「管理をどうすべきか?」に
移ってくると思っています。現にそういう傾向もあります。
明日、週刊ポストが発売されますが、私が一部コメント提供。
これも、そういうことに触れているはず。

マンションというのは、いくつもの世帯が集まって住むところ。
住んでいる人たちが協力し合わなければいけない場面も多いのです。
そのひとつが、管理組合の様々な活動。
今日お会いした管理士さんが面白いことを言っていました。
「マンションの理事会業務は、あまり一生懸命やらない方がいい」

一生懸命やる人がいると、それに反発する人も出てくるでしょう。
また、一生懸命やった人が後任の理事長を見ると
「あいつは何もやっていない」という批判を言いまわることになります。
中には5年も10年も理事長なり副理事長を続ける人もいます。
そうなると、もう完全な独裁者ですね。周りは死屍累々。

そういう管理オタクみたいのが現れて独裁状態になると、
その周辺で何十人もの人がかなり不愉快な思いをしているはず。
まあ、良き独裁もなくはありませんが、反対派は必ずいます。
だから、理想的には2年程度で交代するのがふさわしいと思います。

「それでは継続性が失われる」という人もいます。
そうです。だから管理士みたいな人を顧問にしておくべきです。
ところが、今日管理士さんにお話を聞いていて思ったのは、
中々あの仕事も成立しにくいなあ、ということ。
顧問契約料なんて、せいぜい月5万円です。
ひとりの管理士がいくつのマンションの顧問業務をこなせるかというと、
せいぜい15物件くらいではないかと思われます。
それでやっと月75万円の売上です。

おそらく、15物件の顧問業務を誠実にこなそうとすると
それこそてんてこ舞いになるでしょうね。
総会が重なる6月なんて、徹夜続きだったりして。
そう考えれば、あの仕事も中々大変な割には、
実入りはよくなさそうな気がします。

マンション管理というのは、我が国にとってかなり強力な
社会問題の予備軍だと思います。
現に、リゾートマンションでは顕在化しています。
その波は、そろそろ郊外の遠隔地に押し寄せていますね。
もう数年で、郊外の目立った場所でスラム化や廃墟化が発生しそう。

日本というのは個人の私有財産権をバカ正直に守っている国。
それがマンション管理の効率化、適正化を阻んでいます。
今の法体系でも何とかならないこともないのですが、
もう少し弾力的に運用できる法律を作るべきです。
方向性としては、次の2点ですね
1 ダメなマンションから住民を強制退去(強制買上とか)
2 滞納管理費を解消を迅速化(管理費債権のさらなる優越性)

あと、マンション管理士の活躍の場を広げるような制度もあっていいですね。
200戸以上のマンション管理組合には、顧問任命を義務付けるとか。
今のままだと、マンション管理士制度を作った当初の目的が
ほとんど果たされていないといえます。

「人口が減る」ということに、多くの人が現実感を持っていません。
旅行でも出張でも、地方に出かけた時に街を観察しましょう。
歩いている人たちをよく見てみることです。
商店は軒並み閉ざされ、道行く人の多くは高齢者。
ベビーカーを押す若いお母さんが少ないと感じるはず。
大都市に住んでいれば、それらをあまり意識しません。
私も、あと10数年で高齢者の仲間入りをします。
まだ、団塊の世代の方々も大半が存命中でしょう。
上記2つの法制度改革は、団塊さんたちがダメマンション住民の
多数派になる前にやっておいて方がいいと思います。

ご意見のあるマンション管理士さん、どうぞコメントをお寄せください。

ブログよりも過激な発言をお求めの場合は
私のツイッターをご覧ください。
twitter.com/SAKAKIATS

夕刊フジの公式サイト zakzak
に榊淳司の連載コーナーが設置されています。


2014/7/24 19:02 Comments (4)

4 Comments

二児の母さん、こんにちは。

拙著をお読みいただき、ありがとうございます。
人口が減るとしても、住宅価格が下がれば却って取引は増えるのではないでしょうか。
先日「リゾートマンション滞納管理費回収セミナー」をやった時、
弁護士の先生が「今後マンション価格が低迷すると管理費滞納問題が厄介になる。
少額訴訟が増えれば司法書士の出番が多くなる」的なことをおっしゃっていました。

医者は毎年6000人、法曹資格者は2000人誕生します。
裁判官はその内で最優秀な100人程度と聞きます。
難易度でいえば、医者になるのが一番カンタン。
仕事も見つけやすいと思います。
お医者さんや弁護士先生と個人的に親しくしていますが、
自分が生まれ変わってどっちになりたいかと言えば、医者でしょうね。
裁判官になりたいとは思いません。あまりに生活が窮屈そうで(笑)。
弁護士も忙しそうで、羨ましくないですね。
検察官は面白そうですよ。権力も持っていますし。

試験、がんばってください。
お子さんは、好きな方に進めばよいと思います。
医者も弁護士も、私の時代よりもなりやすくなっています。
どちらも、それなりに魅力的な職業。上手にやればたくさん稼げます。
ラクではなさそうですけど。
しかし、私なんかと違って世間が無条件に敬意を払ってくれるのは
なかなか居心地がよさそうです。その点は、うらやましいかな(笑)。

またなにかあれば気軽にお声がけを。
私でお役に立てることならさせていただきます。

榊淳司

2014/07/26 17:16 | by Sakaki Atsushi

榊様、初めまして。コメント欄から失礼します。

40過ぎにして二児の母でありながら、司法書士の資格取得を目指してる者です。「公認会計士と司法書士どっちかひとつでも十分に食えると思う」というお言葉に反応してコメントさせていただいております。榊様の著書やブログを拝読してますと、人口も減少にあわせて不動産の動きも減るのならば、司法書士の食いぶちも減るのだろうか・・・と一抹の不安を感じながら(実際のところ、どうなんでしょう)受験勉強に励んでいますが、夫の所得は頭打ちで、今の私の事務職の給料では、子供が希望する大学に行かせてやれるか不安だし、自分の老後の保険もかねて、とりあえず頑張ろうと思います(苦笑)

ところで、先日、子供が模擬裁判を体験してきたのですが、裁判官の仕事に非常に興味を持ったようです。医者か弁護士(裁判官)か、その職についておられる方の両方をご存知の榊様でしたら、どちらをお勧めになりますでしょうか?子供はもともと医者になりたがっていたのですが、今回の裁判所のプレゼン(?!)はなかなか巧みでした(苦笑)

榊様がこの記事に書かれていますように、どのマンションを買うか、ではなく、どの時期に今住んでいるマンションを売るかで、遠からず近からず榊様にお世話にならないといけないだろうなって思っていたところでした。その際にはまたどうぞ宜しくお願いします。

追伸
今まではいつか自分の家を建てたいな〜なんて思っていましたが、榊様の著書を読み、この夢は封印いたしました(笑)自分の家を持つなら、ぼろ家を自分でリノベーションということになろうかと思いますが、気楽に賃貸で一生を過ごす方がいいですね。大事なことに気付かせて頂いたことに大感謝です!!

2014/07/26 09:49 | by 二児の母

まろたんさん、こんにちは。

先日、公認会計士と司法書士を両方もっておられる方にあいました。
どっちかひとつでも十分に食えると思うのですが、
二つあったらさらに安定するのでしょうか?
その逆もあり得るのでは、と余計な心配をしました。

マンション管理は、今後の私のメインテーマにしたい分野です。
新築マンションで騒ぐ時代はすでに終わりかけていますからね。
まあ、そんなことをいいながら、もう2年くらいダラダラ過ごしています(笑)。

そのうち、日本中の老朽マンションに絶望感が広がるでしょう。
都心のマンションにはまだ救いがあります。
腐っても都心ですから資産価値が残るのです。
郊外は悲惨なことになります。
ニュータウンや湾岸エリアもやばそうですね。
最後は蹴りあい・・・その元気が残っていればの話ですが。

また、コメントをお待ちしています。ごきげんよう。

榊淳司

2014/07/25 18:52 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

異国のことは知らないけど、この国には資格が多い。
あきれるくらい。
マンション管理士も、そのうちのひとつですわ。

そして「士」か「師」で、ビシッと決める。
サムライとセンセイ、ばっかりですわ。
みんなみんな、どちらさんも。

時に、資格コレクターという御仁がおられるようで。
「あんたも、すきねえ」ですわ。(笑)

ま、クソマジメなぶん、笑かしてくれますわ。

さて、マンションの管理の問題ですが、
その中核は「区分所有」ですからね。
区分所有なんて、都会的、現代的、知的な概念ですよ。

田舎者の、田吾作根性を捨てきれない日本人には、
チ~ト、荷が重いんでは、ありま温泉。(笑)

もっと知的に揉まれなければ、最後は蹴り合いでしょう。
タワマンの高みを求めて殺到するようなメンメンでは、
チ~ト、難しいのでは、ありま鉄道。(クドい・笑)

今宵はこのへんで。
ごきげんよう。

2014/07/25 00:19 | by まろたん

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