際立つ長谷工の価格競争力

マンションの建築費高騰が落ち着いてきた兆しがあります。
といっても「これ以上騰がらない」という状態。
まあ「高止まり」といっていいかもしれませんね。
下がってくれればいいのですが、それはまだ先の話。

オリンピックは想定の倍以上建築費がかかりそうで、
東京都は大幅な見直しを検討しているようですね。
この衰退していく国の首都に、箱物ばかり作っても致し方なし。
なるべくレガシーを残さないように考えるべきです。

しかし、今のようにグダグダと計画を見直しているのなら、
建築工事が始まるのは早くても2年先ではないでしょうか。
その頃には東北の復興事業も一段落しているはず。
新築マンション市場は、それまでにバブルが崩壊して
またもや開店休業状態に陥っているかもしれません。

今、とあるプロジェクトのお手伝いをしているのですが、
そこの建築費は坪120万円。今の標準がこのあたり。
ところが、こういう時代に坪80万円弱でマンションを
建ててしまうゼネコンがあるのです。
言わずと知れた、長谷工コーポレーション。

もちろん、羊羹型で直床。画一間取りの統一仕様。
難しい工事は一切なし。余計な共用施設も作らない。
そして、ある程度規模が大きくないとここまで安くなりません。
120万円からすると80万円は3分の2。驚異的ですね。
だから、野村不動産は郊外で「オハナ」みたいな事業を
今でも展開できているのでしょう。

ただ、私がいつも書いている通り、郊外の大規模ファミリーは
もっとも「買ってはいけない」マンションの代表格です。
理由は、資産性が著しく脆弱だから。10年後は半額以下です。
まあ、それはいつもの話なのですが・・・

マンション業界には「1種いくら」という土地価格の基準があります。
つまり、その土地に建てられる最大容積の床面積1坪当たりの土地価格。
100坪の土地で容積率300%なら、作れる最大床面積が300坪。
その土地が3億円だったら300で割って「1種100万円」ですね。

我々がマンション用地の価格を評価する時には、ほとんどコレで判断。
「世田谷の・・・で1種150万円。そりゃ高いだろう」といった感じ。
例えば、このように1種150万円だとすると、
そこに建築費120万円をONして、土地+建築で坪270万円。
それが、最終販売価格のだいたい6割に相当します。
したがって、その土地で分譲するマンションの価格は450万円。
素早くそれを計算して「高いだろう」となるのです。

マンションの建築費は、もっとも安い時で坪50万円を切っていました。
今の半分以下。4割ちょっとくらいです。
その時には1種150万円の土地でも「よし、買いだ」となります。
販売価格が330万円ちょいになりますから、ずいぶん違います。
粗利を10%削れば200万円台でも可能。
「世田谷の・・・なら行ける」と読めるのです。
今はダメ。だから、買える土地が激減しています。

こんな時代だからこそ、長谷工の存在がデベに喜ばれています。
ただし、このデベは単純なマンションの施工は得意ですが
ちょっと複雑な現場になると、途端に弱点を晒します。
つまり、彼らは決まりきった形のマンションは安くできるけれど、
一流の設計者が意を尽くしたよう物件だと、かなり怪しくなりそう。
だから、都心や城南エリアで長谷工の施工はあまり多くありません。
ちょっと郊外の大規模はほとんど長谷工ですが。
関西でもそれは同じ。

しかし、長谷工のビジネスモデルは大きな岐路に立たされています。
私の考えが正しければ、郊外の大規模ファミリーは今後激減します。
というか、そういったマンションは社会的に不要です。
すでに空家だらけなのですから、それを活用すればこと足ります。
多くの若い家族に重い住宅ローンを背負わせることは、
未来の不幸を生産しているようなもの。
そのことに、多くの人が気付き始めています。
だから、郊外ファミリーの需要は今後大きく減退します。

ということは、長谷工プロジェクトのマンションは売れなくなります。
売れないと、手掛けようというデベロッパーが減ります。
現に、かつてに比べればそういうマンションはかなり減りました。
今後も減り続けて、そのうち絶滅します。

20年もたてば、バカ高い新築マンションを買うのは
かなりの少数派や一部のお金持ちだけになっているはず。
そこら中で、安価な中古住宅が売り出されているはずですから。
新築マンション業界は、今の10分の1程度に縮んでいます。
それも、ほとんどが都心かその周縁部のみに供給されるでしょう。

つまり、長谷工のビジネスモデルは20年で完全に死滅。
というか、10年後でも今の1割以下だと予想します。
まあ、この業界の場合3年以上先は考えませんから、
10年先や20年先の話をする私なんかは宇宙人扱い(笑)。

それにしても長谷工コーポレーションは、今期も絶好調でしょうね。
もしかして、これはあの会社の最後の花火になるかもしれません。
今後、新しいビジネスモデルを生み出せば、話は別ですが。

さて、本日発売の週刊ポストに私のコメントが出ています。
「マンションは消費税増税後こそ買い時だった」
都心ではそうでもないのですが、郊外では
ジワジワと中古マンションの価格が下がっています。
そこを突いた見事な企画。

ポスト2014-7

でも、一通り読んでみて私は
「財務省が密かに作成した『消費税16%計画』をスッパ抜く」
に、大変共感を覚えました。
大手メディアが財務省に籠絡されている実態を赤裸々に暴露。
本当は景気なんてよくなっていないのです。

そういえば、1週間前にメディア実績を更新。
大手メディアには中々登場できませんが、
中堅メディアからはよくお声がかかっています。

ブログよりも過激な発言をお求めの場合は
私のツイッターをご覧ください。
twitter.com/SAKAKIATS

夕刊フジの公式サイト zakzak
に榊淳司の連載コーナーが設置されています。


2014/7/25 19:26 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんばんは。

橘玲さん、いいですね。
見識と才能のある方です。
下手に露出しなくても、言論のみで活動できる方。
そこいら(私も含めて)のネット目立ちたがり屋とは格が違います。

私もこういうことをやっていると、
ご存じの通りの嫉妬ブタどもにつきまとわれます。
連中はビョーキですから、治癒しません。
ただ、連中も言ってみれば
私のファンみたいなものではないかと思い始めました。

この春先、大学時代のゼミOB会に出た時に、
大手マスコミの重鎮になったさる大先輩に言われました。
「君も大したもんじゃないか。日経新聞に出ているのをみたよ。他にも出まくっているじゃないか。いろいろあるようだけど『悪口が続いている』というのも大したもんだ。小者は続かないよ。『悪評も評価の内』というから。話題に上っている間が華。しっかりがんばりなさい」
褒められているのか、けなされているのか(笑)。

まあ、考えようによってはその通り。
私の場合、名前が売れてなんぼの商売です。
実名を挙げての反撃は、詳しく書けませんが拍手喝采。
様々な情報提供までありました。ガセも多いですけど(笑)。

一旦出てしまった以上、ひっこめるわけにもいかないので
当面はこのまま続けます。
まろたんさんは、ひっそりと生きてください。
それもまた、うらやましい限り。
こちらは腹をくくるしかありませんね。

おやすみなさい。 榊淳司

2014/07/28 00:15 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

日本。
就中、東京は不動産ラッシュ。バブル炎上のようで。
聞きかじったところでは、先進国をはじめ、
世界の主要都市は、みな不動産バブル炎上中とか。
で、やはり行き着く先は、いつハジケルか、鎮火するか。
だ、そうです。

不動産は、まさにリアルエステートですから、
ま、田吾作でも「わかりやすい」のです。
例えば信仰において、観念としての「神そのもの」ではなく、
十字架の「イエスキリスト像」です。
こういうのを「偶像崇拝」とか言いますが、まさに、
迷えるタミにとっては、不動産ではなかろうか。
やはり、わかりやすいは、抱きつきやすい、ですか。

ここで話は変わります。

橘玲さんが、最近ブログで書いておられた。
なぜ本名も顔写真も公表しないのか?
との、読者からの質問が多々あるようで、それに回答していました。
その主旨は以下の通りでした。(私の理解によればですが)

1.プライバシーというものは、一度公開すると取り消せない。
つまり、取り返しがつかないと。

2.公開したばあい、見返りとして莫大な利益を得られるのならば、
公開も検討に値するが、彼のばあい、ないとの判断。
つまり、リスク・ベネフィットが釣り合わないと。

3.以上の2点は理詰めですが、彼の感情・感覚として、
「自分が知らないヒトが、自分を一方的に知っている」
という状態は、気持ちがわるい、と言っておられた。

さて、ここからは私見ですが、私も上記3は同感です。
私はずっと、まったく私的に生きて来たのですが、
近所の道を歩いていて、ホントに稀にですが、
知らないヒトから会釈されることがあります。

ほんの一瞬、誰だろうと思いますが、記憶にないヒトです。
このときの感じは、あまり気持ちがよくない。
橘さんの言うことと通じるかな、と。

ヒトは社会的に有名になりたい、という欲求があります。
が、反面、社会のかたすみで人知れず私的に生きたい、
という欲求を持つヒトも、少なからずいるようです。
私はそのグループであり、加齢とともに、
この欲求はつよくなってきたようですわ。
私のばあい、ですが。

> ヒトのこころと言うものは・・・。

むかしの詩人の、そんなつぶやきもあったような。

まとまりのない寝言になりました。
ごきげんよう。

2014/07/26 22:58 | by まろたん

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