天皇誕生日後夜祭に、国家的インチキのご提案

みなさん、天皇誕生日後夜祭おめでとうございます。
私も今日は、早めに帰ってチキンなど食べたいと思います。

実は今日、世田谷の物件現場を回ってきました。
この3カ月で出てきた新規物件は4つ。寂しいですね。
近々、資産価値レポート「世田谷総集編」を更新しますので
メルマガ会員のみなさんにはいち早く注目物件をお知らせしますね。

さて、今年も押し迫ってきて、はや天皇誕生日後夜祭。
マンション屋さんたちも休みに入っていますので、
今夜も大きく脱線してみましょう。いつもながらの経済の話です。

最近、毎回のように面白いコメントをくださる「まろたんさん」と
このブログ上で展開してきた対話の延長戦です。
テーマは「財政危機は日本の破綻につながるか」という問題。
まろたんさんはやや悲観派です。

私はまろたんさんと議論めいたことをする過程で、
ひとつの大きな発見をしてしまいました。
まず、私のかねがねの持論は、「日銀保有の国債を消却せよ」というもの。
この前の更新でも書きましたが、日本銀行は現在、
長期短気等を合わせて200兆円分の国債を保有しています。
この返済期限が来ると、国庫から償還額が支出されて
日銀の資産勘定に現金で入ってしまいます。

よく言われることですが、政府の借金は1000兆円を超えています。
隠れた借金も含めると1300兆円という説もありますね。
それに対して、政府の税収は50兆円未満。
「年収450万円のサラリーマンが1億円借りている」。
数字だけ見ると、その通りなのです。

でも、見方を変えましょう。
日本銀行は形の上では独立していますが、
現実的には政府の一機関と考えてもいいでしょう。
そうすると1億円の借金の内の2000万円は
「自分で自分に借用証書を渡している」とも見做せます。

ちょっとだけ難しい話。前にも何度か書きましたが。
貨幣というものは、共同幻想です。
1万円札には1万円分の価値があると、世界中のほとんどの人が
幻想を抱いているから、1万円分の何かと交換してくれるのです。

現在、世界中でルーブルの取引が拒否されるという現象が起きています。
ルーブルの価値がなくなる、と考える人が増えているからです。
貨幣とは、所詮はそういう物。幻想です。
まあ、もう少しましな言い方をすると「信用」でしょうか。

幻想が信用であるためには、その発行元がしっかりと管理をしている、
ということが大前提になっています。
このシステムを「管理通貨制度」といいます。
みなさん、中学生の時にお勉強したはずです。

さて、私の主張する「日銀が保有する国債を消却せよ」というのは
今の日本の法律では不可能です。
あるいは、日銀が政府の発行する国債を直接引き受けることも禁止。
ただこっちは今や有名無実。黒田バズーガで実質吹き飛びました。

中央銀行(日本では日銀)が、政府の要求その他に従って
政府が使うためのお金を発行すれば、
その通貨はかなりインチキ臭くなります。
まあ、過去のそれをやった国はいくらでもあります。
敗戦直後の日本もそうでした。結果はハイパーインフレ。

この政府によるご都合主義の通貨増刷を「財政ファイナンス」といいます。
これは、今や国際常識として絶対的な禁止事項。
なぜなら、それをやると政府は甘えてどんどんお金を使い、
財政赤字を膨らませるでしょ。通貨が暴落して国民が苦しみます。

でも、私はあえてそれに類することをやってみては、と言っているのです。
「お前は円が暴落して日本が滅びればいいと思っているのか」
なんて声が聞こえてきそうですね。いえ、違います。
最近、それをやっちまっても大した円安にならないのでは、
と考えはじめたのです。せいぜい円が200円を超えるくらいかな。

つらつらと通貨のことを考えている内に、
ニクソンショックを思い出したのです。
ご年配の方はおぼえておいでですよね。1971年の出来事。
アメリカのニクソン大統領が突然声明を発したのです。
「今からドルと金の交換を一時中止する」
その瞬間、ドルはただの共同幻想になりました。

実は1971年まで外国為替市場というものは、事実上存在しませんでした。
主要な通貨はみな、固定相場だったのです。今の人民元みたいなもの。
1ドルは360円でした。高いですね、ドル。
そして通貨の価値は、ドル建ての金本位制のようなもの。
360円で1ドル買うと、1ドル分の金をアメリカの銀行で受け取れる・・
世界で唯一金本位制を続けていたのはアメリカでした。

ところが、このニクソンショックによって、
外国為替はほぼ全部が市場取引となりました。
すべての通貨は幻想となったのです。
ドルはたちまち切り下げられ、320円になりました。
その後、どんどんドルの対円価値は下げ続け、ご存じの通り。

ニクソンショックによってドルは他の
全通貨に対して大いに価値を下げました。
その結果、アメリカは損をしたでしょうか?
いいえ、とてつもない大儲けをして世界経済への支配力を高めました。
冷静に考えてみましょう。

まず、もうアメリカの中央銀行は発行しただけのドルと
金を交換しなくてもよくなりました。
すると、保有している金は全部タダで貰ったようなもの。
すごいですね。莫大な金をドルという「紙のお金」と交換したのです。

次に、アメリカが金本位制でなくなっても、世界の基軸通貨はドルです。
そのドルを、ニクソンショック以降は自由にいくらでも発行できるのです。
世界の国々は、アメリカが発行したドルを喜んで受け取り
代わりに自国の資源や製品や労働力までも差し出します。
ドルを発行するアメリカ、すごいですね。神様みたい(笑)。

2008年のリーマンショックで、アメリカの景気は大幅に後退しました。
ところがFRB(連邦準備制度理事会)が3回にわたって
大量のドルを発行して債券や株式を買いまくったのです。
それでアメリカの景気は持ち直し、いまや5%成長へ。
金本位制が続いていれば、絶対に不可能なことです。
黒田君のバズーガは、このFRBのやったQE1~3の真似です。

1971年のニクソンショックは、本来ならドルを一瞬にして
紙くずにしてしまいかねない暴挙。でも結果的に成功。
ドルの価値は下がりましたが、大量の金と「通貨発行」という
「神のごとき」手段を手に入れました。

今私が「日銀保有の国債を消してしまえ」と言っているのは、
ニクソンショックに比べればどうということはありません。
それ以上にインチキなことを、過去にいくつもの国がやりました。
中にはハイパーインフレになった国もあります。

今の日本の場合は「毎年50兆円ずつ10年間にわたって消却」
みたいな法律を作って実行していけばいいんじゃないですか。
消費税を上げるよりも、国民は納得しやすいですね。
ただ、暴挙は暴挙ですよ。インフレが来るでしょう。
だから、その代わりに「国会議員を年に2人ずつ減らす」とか、
「公務員の賞与は民間平均以下にする」なんていう、
「自分たちも痛いのよ」という取引材料が必要でしょ。

しかし、そもそも管理通貨制度というものそのものが、
人間が作り上げた壮大な共同幻想じゃないですか。
幻想の中でちょっとくらいズルしたって大したことないはず。
そんなことを考えながら、天皇陛下誕生日後夜祭を祝います。

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2014/12/24 19:36 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんにちは。

封書、いただきました。
先ほど、昼飯を食いながら読了しました。
なるほど、まろたんさんはお目が高い。
実に興味深い内容でした。
藻谷さんの発想には惹かれるものがありますね。
私も最近「経済成長至上主義」に懐疑的となりました。
里山資本主義の発想も悪くありません。

さて、ご提起2の問題について少々。
私は、これは究極「お金の問題」かと思います。
お金とは共同幻想であり、突き詰めれば抽象的存在です。
お金にだらしない政府が見捨てられて、
円が暴落して、さらにハイパーインフレがやってきても、
別にどうということは無かろう、と私は高をくくっています。
金融資産を持っている方はかなり困るでしょう。
でも私のように持たざる者は、当座困るだけ。

日本経済は極度に混乱しますが、
日本人は世界一秩序正しく混乱に対処できる民族です。
日本にはジジババが多いとはいえ1億2千万人ほどの人間が住んでいて
毎日メシを食って排便をして暮らしています。
1億2千万人が消費する様々なモノが必要で、主に輸入しています。
そして、外国人がありがたがる高品質な工業製品を生産しています。
ハイパーインフレになって、それらの取引価格の桁がひとつふたつ上がろうとも、
こういった経済活動の根本は揺るぎません。
この国は、政府が無能でもそれなりに機能します。

あの3.11の地震の時に、史上最悪の首相があれだけ邪魔をしても
フクシマは最悪の結果を避けることができました。
それは今は亡き吉田所長を始めとした現場の力。

日本の政府は我々から税金を巻き上げて好きに使っているだけ。
その何割かは特定の企業や個人を潤しているでしょう。
でもまあ、6割くらいは我々の社会の安寧のために
つかっていてくれれば良しとすべきではないでしょうか。
その政府が財政破綻しても、国民経済を焼野原にはしません。

近代日本は敗戦の混乱でハイパーインフレを起こしました。
あの時は東京も大阪も焼野原。
荒れに比べれば、日常使う円の桁がひとつふたつ変わって、
計算が大変になることくらい大したことはないですよ。

ま、私はそうなるとは思いませんが。
昨日も書いたように、壮大なインチキの中の
ちょっと細かなゴマカシで当面はしのげるでしょう。

今日は私の事務所で読者さん参加の忘年会を催します。

ではまた。 ごきげんよう 榊淳司

2014/12/25 15:47 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

世に「百家争鳴」ありと。
昨今、本邦に於いて、言論が「真っ向対立」している問題、
として、次の2つがあります。

1.放射線の被曝により人体への影響ありか?
2.将来、日本国の財政は破綻するか?

上記の対立・1については、割愛します。
対立・2について、以下、すこし。

「理屈とコウヤクは、どこにでも、くっつく」と言います。

どんなことにも、それなりに理論・理屈が成り立ち、一理あり、
と言うことでしょう。
それにしても、このセリフ、誰が言ったのか知りませんが、
理屈とコウヤクを並べるとはね。(笑)
ま、それはともかく。

ですから、国家財政破綻の当否についても、議論百出です。
考えれば考えるほど、わからんチン。
こういうものは、シンプルに考えてみるに限ります。
シンプルとは、本質的に見る・考えることでしょう。

榊さまのご指摘のとおり、一国の通貨は、
そこの全て国民が、それを通貨と認めること、いわば、
全ての国民の「共同幻想」によって、成立しています。
更に同じように、諸外国も信認することで成立しています。

ここで、信認されるべき「主体」は「政府」であって、
通貨は、単に「道具」でしかありません。
従って「政府」が信用を失ったとき、
その「客体」に過ぎない「通貨」はアウトですね。

その政府ですが、如何でしょうか?
借金暮らしにハマってしまい、この先、そこから、
抜け出すことが出来るように、見えるでしょうか?

現在までに積み上げた借金・1000兆円超が主ではなく、
放漫財政、ズバリ、お金にダラシノナイ生活そのことが、
主たる問題では、有馬温泉。(笑)

更に言いましょう。
黒田バズーカ・2は、禁断の「麻薬」です。
これについても、根本的な問題は「止められない」ということ。
激しい禁断症状が生じることが避けられない「麻薬」を、
どうやって止めますか?

カネにダラシノナイひとを、信じるひとは、おりません。
いや、国家は違うよ、と言う御仁がおられる。
「違いません。同じです!」
カネにダラシノナイ政府は、やがて見切られます。
「共同幻想」の終わりです。

如何でしょうか?
ダラシノナイ生活を見直し改めるしか、信認は得られません。
つまり、自分たちの社会は崩れて、その結果、崩壊です。
「焼け野原。焦土の国家。茫然自失のグーミン」です。
聞こえては来ませんか?
その日に向かっての「カウント・ダウン」が。

先送り、時間かせぎの「刹那主義」。
よろしいのですか?
苦しくとも「まっとうに」生きる道も、ありますが。
「政治家」だけではなく「国民」こそが、試されます。

ま、うすうす感じてはいるのでしょう。
おおかたのグーミンも。
が、見たくないものは、・・・ですね。
悲観論・どん底論をぶったところで、筆を置きます。

きょうび、来年のことを言っても、オニは笑わん、
そうですから、ひとこと。
来年、日本人は「ラスト・ダンス」を踊るのでしょう。

榊さまの事務所へ、昨日、封書を一通、お送りしました。

ごきげんよう。

作家・橋本治の近著、
「バカになったか、日本人」、
を読了。

2014/12/25 12:21 | by まろたん

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