マンション史上最悪の欠陥建築・ベルコリーヌ南大沢

今年はマンションの欠陥建築問題が多発しました。
三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウスグラン 南青山高樹町」に始まり、
三井不動産レジデンシャルの「パークタワー新川崎」、
11年前の住友不動産「パークスクエア三ツ沢公園」。
積水ハウスの「六甲アイランドCITY W7 Residence」なんてのもありました。
その他、いろいろあったのですが、まあこれくらいで。

今日は、過去にあった超ド級の欠陥マンションのお話し。
それは多摩ニュータウンの「ベルコリーヌ南大沢」という団地。
なんと、ここの46棟が丸ごと「欠陥マンション」だったのです。
1棟や2棟ではありません。全919戸というスケール。

分譲されたのは1989年から1993年。まさにバブルの絶頂期。
当時は5千万円から7千万だったといいます。
そんな大金を投じて、80倍とも言われる抽選に当たり、
引越してみれば雨漏りに結露。手で触っただけでコンクリートが崩れる。
「なんじゃこれは!」という世界ですね。
鉄筋が不足していたり、切断されていたところもあったとか。

分譲したのは、当時の住宅都市整備公団。いまのUR。
怒った住民たちが改善を求めたにもかかわらず、最初はのらりくらり。
「設計図書は紛失しました」なんて、噴飯ものの回答までしていたそうです。
2002年には大問題となって、国交省からきついお叱り。
国会でも取り上げられたようです。

読売2007.2.19読売新聞 2007.2.15 ベルコリーヌ南大沢のBLOG(ブログ)さんより借用

当時、私はマンション業界の端っこにましたが、ノーマーク。
「南大沢にかっこいい団地があるじゃん」くらいの認識でした。
実際、当時の私は勉強のために現地を見に行ったことすらあるくらい。
「街づくり」として「よくできている」と感心した覚えがあります。

ところが、見ると住むでは大違いだったのです。
住民たちは粘り強くURと交渉を重ね、46棟中20棟が建て直し。
特に、ある街区では18棟中16棟が建て直し。
現在、すでにすべての建て直しが終わっています。
しかし、この間の交渉などに疲れた3分の1以上の住民が、
諦めて他の住まいへ去ったそうです。
それは、何年も待たされれば嫌になりますね。

その欠陥具合なんて、姉歯どころではありません。
大規模修繕工事に伴って詳しく調査したところ
あるべき耐震基準の58%しかなかった、とか。
ヒューザーマンションよりもひどいじゃないですか!

いったいどうしてそんなことになったのか、
今から調べてもよく分かりません。
また、これほどの大事件であるにもかかわらず、
メディアではほとんど報道されませんでした。

問題化した1990年代には、まだインターネットが
それほど普及していなかったこともあるのでしょうね。
しかし、多くのご家族が苦しみぬいたわけですから、
もっとしっかりと報道すべきであったのでしょう。
URは「入居者のプライバシーのため」と称して、
この問題を極力隠蔽しようとしたフシがあります。
まあ、公になれば資産価値に影響するのは必至。
嫌がる住民もいたであろうことは想像できます。

URが最終的にこの問題を処理するために投じた費用は
600億円とも言われています。
普通に919戸を建替えたとして、当時の建築費相場で考えれば
140億円ほどだったはずです。
また、引越しや仮住まいの費用を負担したとしても
全部で200億円もあれば間に合ったはず。
さらには、その費用のほとんどは欠陥建築を施工した
東急建設や三菱建設(現ピーエス三菱)などに負担させられるはず。
なぜ、そうしなかったのか?

また、もっと大きななぞは、
なぜこんなに大規模に欠陥工事が行われたのか?
46棟を施工したのは上記2社など含めて十数社だそうです。
それだけの会社が、同時に一点集中で欠陥工事を行うなんて
普通に考えればかなり不自然ですね。
施工のやり方は、それぞれのゼネコンによって違うはず。
現場の責任者も違うはず。それがなぜ「みんなで一緒に?」。

私としては、発注者である現UR(住宅都市整備機構)に
何らかの責を帰せられる事由があり、これほどの大規模な
「手抜き工事」が発生したのではないか、と考えるのが自然だと思います。
現に、施工担当のゼネコンがURから厳しく責められた、
といった様子はあまり窺い知れません。
再建築費を負担した、というような情報も得られませんでした。

この問題、もし今起こっていれば大騒ぎですね。
「姉歯・ヒューザー」以上の大事件ではないですか?
日本のマンション史上に残る、最大の欠陥建築事件です。
そして、これはかなり人為的な原因であると考えられるので、
今後も起こらないとは限りませんね。

「公団だから」と信じて大金を支払った方々にご同情申し上げます。
また、今年は最初に書いたように三井、三菱、住友と
財閥最大手系デベロッパーのチョンボが発覚。
マンションというのは「大手だから」「公団だから」といって、
けっして安心できないシロモノであることを、
みなさんもよく認識していただいた方がいいですね。

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2014/11/7 15:12 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんにちは。

まったく、消費者というのは何と弱い立場なのでしょうね。
欠陥マンションの最後の建て替えが終わったのが今年の春。
なんと20数年もの歳月を費やしています。
その間、購入者が蒙った精神的な打撃はいかばかりかと推察します。
しかも、今となっては資産価値もかなり減価。
ニュータウンにはすでに衰退の兆し。
ふんだりけったりのこの状態に、URは何をしてくれたのでしょう?
何ともやるせない話です。

まろたんさんの続きのお話、楽しみにしています。

ごきげんよう 榊淳司

2014/11/09 17:30 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

「巨悪は眠らせない」

とは、元検事総長・故伊藤榮樹 (しげき) の言葉です。
この言葉の含むところについては、本稿の主題から外れますので、
割愛します。

さて「巨悪」とは何か?
それは「小悪」に対するものであり、
「質」は、根が深く、悪質度が高いもので、かつ、
「量」は、まさに被害甚大なもの、と。

その「巨悪」をはたらく主体は、
「巨人」であって「小人」ではありません。
なぜなら、小人は、巨悪をはたらくパワーを持っていませんから。
尚、ここでの「人」には「自然人」と「法人」が含まれます。

さて、
> 有名な大企業、URのような政府系法人であっても、安心できない、
との主旨のコメント。
誠にもって、その通りであります。

なぜなら、上述の通り、
「巨悪」は「巨人」にしか出来ないという理論から言えば、
この「巨人」こそが有名な大企業やURのような法人に当たり、ならば、これらこそ注意すべきである、
という結論が建ち至るのではないでしょうか。

世の中は、まったく皮肉であります。

ここで、このUR物件の欠陥は「過誤・あやまち」であり、
作為的な「悪」には当たらず、との反論が当然にあろうか、
と思います。
が、その反論に対しては、更なる反論を言っておきます。

すなわち、この欠陥が、
果たして「過誤」であるか「作為的な悪」であるのか、
誰にも立証できない。
となれば、どちらも「否定できない」と。
つまり、どちらも「あり得る」との理論が成り立ちますね。

これに対しては、異論反論、なかろうかと。

では、次に、われわれ消費者は、
この「ババ」を引かぬよう、どのように対応すれば良いか?
この重要なことについて、私は腹案を持っていますが、
本日はここで筆を置きます。

ち~とばかり、疲れたけん。トシかなあ ・・・。

ごきげんよう。

2014/11/07 22:36 | by まろたん

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